くすんだイタリア代表に特効薬はあるか=威厳を失った世界王者の現状

ホンマヨシカ

コンフェデ杯での失態

コンフェデ杯では、まさかのグループリーグ敗退。イタリア代表に世界王者の風格は見られなかった 【Getty Images】

 南アフリカで行われているコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)で、イタリアがエジプトに0−1で敗れるという番狂わせがあった翌日、イタリアのスポーツ新聞『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の第一面の見出しには「われわれがミイラだ」と大きく掲載された。
 イタリア代表監督のリッピは、21日のブラジル戦を前にして「ミイラも包帯を取って生き返るだろう」とユーモアを交えて語っていたのだが、その試合でイタリアは0−3と完敗。包帯を解くことができずに、大会前に確実視されていた準決勝進出を果たせぬまま、早々と帰国の途についた。

 イタリアにとって、今回のコンフェデ杯は大陸王者のタイトルを懸けて臨む大会ではなかった。むしろ、来年のワールドカップ(W杯)開催地でブラジルやスペインなどの強豪国と戦う機会を与えられた非常に有意義な強化試合という位置づけに近かった。もちろんブラジルやスペインもイタリアと同様のスタンスかもしれない。だが、彼らが順調に準決勝に進出した一方で、2006年の世界王者はグループリーグ敗退という屈辱を味わった。

 イタリアの敗退について多くの関係者が感想を述べているが、一番的確だと思えたのは、ブラジル代表として1958年のW杯でプレーし、その4年後のW杯ではイタリア代表選手として出場した名アタッカー、ジョゼ・アルタフィーニのコメントだ。
「イタリアと違って南米の選手は、強化試合でも勝利のために試合に挑む。それにしても、(コンフェデ杯での)イタリアは疲れていたようだ。何人かの選手はカモラネージのように本来のポジションでプレーしていなかった。チームを新たに再建する必要はないが、選手を入れ替える必要はありそうだ。経験のある選手と新しい選手。わたしならカッサーノにチャンスを与えるが……」

懸念される選手の質の低下

 イタリアがコンフェデ杯に本気で臨むと思った人間は少なかったが、さすがにこれほどひどい結果で終わるとは予想していなかったはずだ。
 第1戦の米国戦では前半33分に相手選手が退場処分を受けたこともあって3−1で勝利したが、第2戦ではエジプトの堅い守りを崩せずに0−1で屈辱的な敗戦を喫した。そして、準決勝進出が懸かったブラジル戦ではもろくも0−3で敗れ去った。
 3試合を通して目に付いたのは、アルタフィーニの指摘通り、選手のコンディションの悪さだった。何とか合格点を与えられるのはGKのブッフォンとFWのロッシ、あとは第2戦目までのFWのイアキンタぐらいだろうか。ほかの選手はカンピオナート(リーグ戦)の疲れを引きずって試合に挑んでいたように見えた。

 そのコンディションの悪さは、ブラジル戦後にリッピも認めていたが、何人かの選手は、単なるコンディションの悪さだけでなく、はっきりと体力的な衰えも感じ取れた。3年前のW杯ドイツ大会の中心メンバーであったカンナバーロやザンブロッタ、ピルロ、トーニらである。
 特に来年の本大会では36歳となるカンナバーロの衰えは著しい(※現時点でイタリアのW杯出場は未確定)。ブラジル戦では彼のスピードの衰えと反応の遅さから3失点を喫したといってもいい。リッピは、カンナバーロのチームをけん引する能力に全幅の信頼を寄せ、来年の本大会でも彼を中心にチームを構成することに変わりはないようだが、内心は不安を感じているに違いない。
 衰えの目立つカンナバーロの唯一の救いは、2009−10シーズンから古巣ユベントスで再びプレーすること。代表でコンビを組むキエッリーニと連係を高めることで、スピードと反応の衰えを少しはカバーできるからだ。

 とはいえ、カンナバーロ以上に深刻なのはピルロのポジションである。彼に代わりに代表の司令塔を任せられる選手は現時点では見当たらない。強いて名前を挙げるなら、ユベントスへの移籍がうわさされるウディネーゼのダゴスティーノだが、仮に移籍が実現しても、果たしてレギュラーとしてどれだけ試合に出場できるのか。リッピは、ピルロをデビュー当時のポジションであるトップ下にコンバートし、守備の負担をなるべく軽減する方法も考えているようだが、一番の頭痛の種であることに間違いない。

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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