くすんだイタリア代表に特効薬はあるか=威厳を失った世界王者の現状

ホンマヨシカ

変革を迫られるイタリア代表

イタリア代表には、ジョビンコ(写真)ら若手選手とベテラン選手の融合が望まれる 【Getty Images】

 リッピは今回のコンフェデ杯を前に、来年のW杯までに大幅な選手の入れ替えはしないと語った。ブラジル戦後のインタビューでも次のようなコメントを残している。
「外部から『なぜもっと若手を起用しなかったのか』という声が聞こえるが、このような試合は経験を持つ選手を必要とするものだ。冷静になって考えてほしい。ブラジルが強いことは分かっていたが、われわれは良いコンディションで試合に臨めなかった。今回の結果はわれわれの限界を表している。だが、この先もこのままだということではない。確かなのは、現時点ではイタリアは準決勝進出に値しないということ。大会後にバカンスに行き、構想を練り直す」
 現メンバーでも「コンディションさえ良ければ結果を残せた」とでも言いたげな談話だが、数人の選手の入れ替えはリッピもすでに検討しているはずだ。

 アルタフィーニが推薦するカッサーノの招集の可能性は低そうだ。なぜなら、彼はドナドーニ前代表監督の秘蔵っ子だったことが原因で、リッピは招集を避けているとのうわさがあるからだ。この話が本当なら非常にばかげた話であるが、実際はカッサーノの過去における品行がネックになっているのだろう。
 若手選手にも十分に可能性が残されている。現在開催中のU−21欧州選手権でイタリア代表は順調に勝ち進んでいる(※同大会は予選開始時にU−21代表で行われるため、本大会にはU−23代表が出場している)。DFのモッタやボッケッティ、MFマルキージオ、FWバロテッリ、そしてファンタジスタのジョビンコらはA代表でも十分に通用するだろうし、今回代表に選出されながらも出場機会を得られなかった18歳のDFサントンも非常に有能な選手である。若手選手が来年の本大会メンバーに加えられる可能性は決して低くないだろう。

 リッピにとって幸運だったのは、W杯の1年前に課題が浮き彫りにされたことだ。もしコンフェデ杯の存在がなかったなら、これらの課題が本大会で突然噴出していたかもしれない。
「仮にドナドーニが監督だったら、どれだけ非難されていたか」
 リッピと同じトスカーナ地方出身で、フィオレンティーナなどで監督を務めたアルド・アグロッピはこう言った。確かにリッピにはドイツ大会で優勝に導いたという実績がある。それ故に今回の散々な結果の割には、イタリアではそれほど非難の声が挙がっていない。しかし一方で、リッピの代表監督としての能力に疑問の声が少しずつ出始めていることは確かである。

<了>

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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