ミラン、カカのレアル・マドリー移籍が示す不安な未来=ホンマヨシカの「セリエA・未来派宣言」

ホンマヨシカ

「レアル・マドリー移籍は僕にとって重要な挑戦」

レアル・マドリー加入が決まったカカ 【Photo:Maurizio Borsari/アフロ】

 イタリア現地時間の6月9日未明、カカのレアル・マドリーへの移籍が発表された。移籍金は6700万ユーロ(約89億円)。これはミランからほかのクラブへ移籍する際に支払われる金額としては歴代最高額である。契約年数は6年間、カカの年俸は1000万ユーロ(約13億7000万円)に上るという。
 ブラジル代表の合宿先で緊急記者会見を行ったカカは、「レアル・マドリーは僕にとって重要な挑戦だ。このクラブが再び、スペイン、そしてヨーロッパにおける主役に戻れるよう、多くのタイトルを獲得したい」と意気込みを語った。

 今回の移籍は、2001年にジダンがユベントスからレアル・マドリーに移った際の約7500万ユーロ(約102億円)に次ぐ史上2番目の高額移籍として刻まれることとなった(クリスティアーノ・ロナウドの移籍が成立する見通しなので3番目になるが……)。しかも、この世界的な不況にもかかわらず、である。カカをめぐる移籍劇の背景にはどんな事情があったのだろうか。

今年1月の時点で予想された移籍

 カカの身辺が騒がしくなったのは今年1月に入ってから。冬の移籍市場でマンチェスター・シティ(マンC)が1億ユーロ(約136億円)の移籍金を提示してきた。このオファーを受けたミランはカカを放出する方向で動く。この時点で、両クラブの間ではほぼ合意に達していたのだが、結局、移籍話は流れてしまった。実現に至らなかった理由は、ご存じのようにカカがミランへの残留を強く望んだからである。だが、カカが移籍を拒んだのはミランのユニホームに対する愛着だけではなかった。
 いくら自身のマネジャーを務める父親から説得されても、世界的な名声を博するミランと比べ、ネームバリューの乏しいクラブへの移籍に、カカは魅力を感じなかったのだ。それが残留を決断した理由でもあった。

 カカのミラン残留が決定し、このニュースがイタリアのマスコミに大きく取り上げられたときも、こんな憶測が飛び交った。伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』をはじめ幾つかのマスメディアは「もしレアル・マドリーからのオファーであったなら、移籍の説得に応じただろう」とし、「今シーズン終了後に再びカカの移籍話が再発する可能性が高い」と伝えたのだ。そして今回、5カ月前に予見されたように、レアル・マドリーへの移籍話が持ち上がった。

 レアル・マドリーがカカに触手を伸ばしたのは何も初めてではない。彼らは3年前から毎シーズンのようにカカ獲得に動いていた。しかし、今回のオファーはこれまでと違って、レアル・マドリーからの一方的な求愛ではなかった。もう一方の当事者であるミランは、クラブの財政赤字を少しでも改善するため、カカが移籍を了承するような名門クラブからの高額オファーが届くのを待っていたのだ。

 そのような状況下で、3年ぶりにレアル・マドリー会長に返り咲いたフロレンティーノ・ペレスがクラブ再建構想の目玉として、カカ獲得に乗り出してきた。お互いの利害は完全に一致した。ミランのアドリアーノ・ガッリアーニ副会長によると、ペレス会長とは2000年から友好関係を築いており、そのことが移籍をスムーズに実現させたという。
 カカ自身も「ミランは財政問題に直面しているし、その上、(レアル・マドリーでプレーすることが)僕のキャリアにプラスになるなら、これはパーフェクトな選択だ」と認めている。

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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