「城島ノート」で勝ち取った信頼

丹羽政善

ベダードら投手陣との関係を改善

5月4日のアスレチックス戦では9回に同点弾を放ち、復活をアピールした 【写真は共同】

 開幕2戦目には、やはり象徴的なシーンがあった。

 昨季、城島と息が合わないと伝えられてきたエリック・ベダードがピンチを切り抜けたあと、ダッグアウトに戻りながら、城島に笑みを向けていたのだ。これには、プレスボックスにいたシアトルの地元記者がびっくり。

 城島が太ももを故障した4月15日、右足を引きずりながらダッグアウトに戻ると、真っ先に声をかけたのは、やはり、城島との呼吸が合わないとされてきたジャロッド・ワッシュバーン。その日の先発だった彼は、それまで城島とのコンビでエンゼルス打線を無失点に抑えていたが、城島の両肩を両腕で挟み込むようにして、何やら、一言、二言。「あとは任せろ」とでも、語りかけているようだった。

 城島の元で成長を遂げたのが、ことしからクローザーとなったブランドン・モロー。しかし開幕2戦目、2点のリードをもらいながら制球難で逆転を許す。試合後、ロッカーでうなだれていたが、彼の横にピタリと寄り添い、なにやら小声で話しかけていたのが城島。以来、モローは5月2日に故障者リストに入ってしまったが、1点も与えていない。

 モローは、「ジョーからは、変化球を使うタイミングを教わった」と話す。100マイル(約161キロ)近い速球を誇るモロー。それだけでも十分に通用するが、「さらにそれを効果的なものにするには、変化球が必要」と、城島は教えたそう。

 初球、相手がストレートを待っているところで、すっと変化球でストライクを取る。「それだけで、そのあとが、ずっと楽になる」と、モロー。
 4月11日のアスレチックス戦では、9回2死一、三塁のピンチで、最後、ノマー・ガルシアパーラをカーブで空振り三振に切って取った。当然のようにストレートを予測していたガルシアパーラのバットは、派手に空を切っている。

 昨季の屈辱――味方投手陣とのもつれた関係を、ゆっくり、確実にほぐしてきた城島。それだけに故障者リスト入りは不運でもあったが、5月3日のアスレチックス戦では、その遅れを一気に取り戻す。

 1点を追う9回、城島は打席に入ると、初球を強振。高々と上がった打球は、左翼席に消えた。

「おれが一番打ちたかった」

 城島がチームに戻ってきた。

【城島ノート】

マット・ホリデーのタイプ分析。7回に本塁打を打たれた場面の攻めを改めてこう振り返っている。

「基本的には、(早いカウントの場合)真っすぐを待ってるんでしょう。まあ、変化球待ちって、あまりいないですけど。真っすぐ対応で入って来て、早いカウントで空振りをすると、次はある程度狙って来るタイプ。あそこでホームランを打たれたけど、真っすぐでいくよりは悔いはない。やはりあの状況、2死走者なしで、アウトサイドにサインを出して打たれたら、それはしょうがない。インサイドにいっていたら、ほかの野手に申し訳ない。僕は、そういう信念がある。インサイドは見せる。見せ球で使わなきゃいけないけど、1−1から見せたわけだから、やはり外でしょうね。だから、(あの配球に)悔いはない」


<了>

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。

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