マツケン兄弟&大矢、それぞれの戦い=卓球世界選手権第3日 男子シングルス

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努力が花開いた松平賢

初の世界選手権で1回戦を突破し、2回戦でもオウ・レイキン相手に検討を見せた松平賢二 【Photo:杉本哲大/アフロスポーツ】

「今はぜんぜん疲れていない。もっと試合をやりたいというワクワクした感じがある」
 2回戦で敗れた後、松平賢はこうコメントした。対戦相手のオウ・レイキンは、“最強・中国”の一角を占める世界ランク5位の選手。対する松平賢は世界ランク139位と圧倒的な差があるように思われた。しかし、第2ゲームではジュースに持ち込み、第4ゲームではゲームを奪い一矢報いるなど、ゲームカウント1−4という数字以上の善戦を見せたのだ。
「(試合に負けて)悔しいです。自分が取れるゲームはまだたくさんあったので。ただ思った以上に、(実力の)差が開いていないと思ったので、それはためになりました」

 松平賢は弟・健太より2歳年上の20歳。青森山田高では、“日本のエース”水谷の同級生であり、卓球部キャプテンとして引っ張っていく存在だった。全日本選手権を高校2年生で制した水谷や、世界ジュニア王者の弟に比べると、賢二は一歩遅れていた部分があった。
 しかし、2人が海外で戦い、実力を伸ばしているときに、賢二は国内でその強さに磨きをかけていた。昨年8月の全日本学生選手権では、水谷が途中で破れたのを尻目に、見事優勝。初の全国タイトルを獲得すると、12月に行われた世界選手権代表選考会では、健太を破って代表権を手に入れた。
 そして09年、4月に行われた日本のトップ選手が集まるビッグトーナメントでは、同じ日本代表である吉田海偉、韓陽、そして水谷と続けざまに破り、初のシニア大会優勝を飾った。その優勝後のコメントでは「ボールタッチや戦術面ではかなわない。上回っているのはあきらめない気持ちだけ」と精神面の強さを勝因として挙げていた。

 粘り強さと体力が売りの賢二は、その卓球に対するひたむきさで成長を続ける。そして、今回の世界選手権デビューは、世界の強豪と戦えるという自信を深めるものとなった。

世界と戦う手ごたえをつかんだ大矢

 得点を取るたびに、会場に咆哮(ほうこう)が響く。時には、隣の卓球台で試合をしている選手が振り向いてしまうほどだ。パワフルなプレーと、大きなガッツポーズで会場を沸かせていたのが大矢英俊だ。
 昨年、中国・広州で行われた世界選手権団体戦のメンバーに選ばれた大矢は、シングルスに1試合出場したが、格下相手に破れ“不完全燃焼”に終わった。
 その思いをぶつけるため、今回の横浜に向けて並々ならぬ闘志を燃やしていたのだ。昨年12月の世界選手権代表選考会では、予選リーグを9勝1敗で通過し、決勝トーナメントではマツケン兄弟を破り、見事1位突破。早々と世界選手権シングルス代表の座を手に入れた。
 その後、今春から入社するはずだった日産自動車が休部してしまうという“時代の憂き目”にあってしまうが、なんとか新しい所属先も決まり、万全の状態で世界選手権に臨むことが出来た。

 1回戦では世界ランク61位のトリオラ(ナイジェリア)と対戦。第1ゲームで19−17と続いた接戦を奪うと、最終的にゲームカウント4−1で破り、世界選手権初勝利を飾った。自信を持って臨んだ2回戦では、さらに世界ランクが上のズース(ドイツ=世界27位)と激突。
「相手の打球点の早さに『こんな早いのか』と動揺してしまいました」と終始相手に圧倒され、ゲームカウント0−4で敗れてしまった。
 しかし試合後、「今回の大会は自分らしいプレーができたので、満足しています」とコメント。世界の実力者と戦える手ごたえを感じた大矢は、「(目標は)海外に出て、いろいろなところに試合をしに行きたい。自分の力をいろいろな国で試したいと思いました」と、向上心を持って、さらなる飛躍を誓った。

 横浜の地で世界の強豪と触れ合った若武者たちは、3年後に控えたロンドン五輪を目標としている。そしてその先には、悲願のメダル獲得を目指していく。

<了>

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