危機に瀕するアルゼンチンサッカー=コパ・リベルタドーレス2009での惨敗

リベルタで低迷するアルゼンチン勢

今年はコパ・リベルタドーレスで低迷するアルゼンチン勢。ボカはグループリーグ突破なるか 【Photo:アフロ】

 2009年のコパ・リベルタドーレスで異変が起きている。大会はグループリーグがほぼ終了し、いくつかのグループが最終節を残している状況。そんな中、アルゼンチンから参加している5チームのうち、わずか1チーム(エストゥディアンテス)しかラウンド16への切符を確保できていないのだ。
 ボカ・ジュニアーズは首位を保っているが、アルゼンチンチーム2番目となる次ラウンド進出を自力で決めるためには、ホームでデポルティボ・タチラ(ベネズエラ)に引き分け以上が必要である。

 一方、ラヌース、サン・ロレンソ、リバー・プレート(リーベル)の3チームは、32チームのうち半分がラウンド16に進めるグループリーグにあって、すでに敗退が決定した。最も驚きだったのは、サン・ロレンソとリーベルの低迷だ(特にサン・ロレンソ)。両者のグループにブラジル勢はおらず、選手や資金面から見てもその力は突出しているにもかかわらず、国際舞台で成功するというもくろみは早くも挫折してしまった。

 サン・ロレンソ、リーベルは共に1試合を残して敗退が決まった。リーベルについては、ホームでの第4節、ナシオナル(ウルグアイ)戦に引き分けたのが痛い。続くナシオナル(パラグアイ)との一戦に敗れたことで、2位に滑り込む可能性も失った。パラグアイのチームがアルゼンチンのチームに4−2で勝ったという事実が、リーベルの冒険の終わりと、新たなるフラストレーションを雄弁に物語っている。

低迷は偶然か必然か

 こうした結果を見ても顕著なのは、アルゼンチンサッカーが深刻な問題を抱えているということだ。アルゼンチン代表もまた、2010年ワールドカップ・南アフリカ大会の南米予選でここまで4位と苦戦し、毎度のことながら正しい方向に進んでいない印象を与える。

 08年のコパ・リベルタドーレスでは、今年と同じ顔ぶれの5チーム(ボカ、リーベル、サン・ロレンソ、エストゥディアンテス、ラヌース)に、予選ラウンドを勝ち上がったアルセナルを加えた6チームがグループリーグを戦った。ラウンド16に勝ち進んだのは、アルセナル以外の5チーム。今年はうまくいって、すでに勝ち抜きを決めたエストゥディアンテス、そしてボカの2チームだけである。この低迷ぶりは偶然なのか、必然なのか。

 アルゼンチン国内リーグの過去3年、6大会(前期、後期)の順位表を眺めてみると、偶然とは思えない事実が浮かび上がってくる(アルゼンチンでは過去3年の成績の平均値によって、1部と2部の昇格・降格を決定する)。ここ3年のリスト上位に来ている2チームは、ボカとエストゥディアンテスである。
 そしてコパ・リベルタドーレスにおいては、1996年にリーベルが優勝して以来、アルゼンチン勢の中で唯一、ボカだけがファイナリストとなっているのだ(2000年、01年、03年、07年は優勝。04年は準優勝)。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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