後半8分のビッグゲイン。“勁草”が“疾風”となり、成長を示す勝利を呼び込む
レッドハリケーンズ大阪 山口泰輝選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】
二十四史の一つ・後漢書の中に、“疾風に勁草を知る”という言葉がある。速い風が吹いたときには、折れてしまわない強い草を知ることができる。そこから転じて、苦難のときにこそ、その者の真価が分かるという意味である。
1カ月前、RH大阪はプレシーズンマッチの3戦目として、GR東葛とのゲームに臨んだ。結果は、19対54。昨季に対戦した2戦に続き、大差で敗れた。
その試合では、23歳の山口泰輝がゲームキャプテンを務めた。試合後には先輩たちばかりの中で「勝ちたいという気持ちがプレーから感じられなかった」とあえて強めの言葉を選び、「1カ月後には勝てるようにしましょうよ」とチームに呼びかけた。キャプテンの杉下暢は、山口がいかに堅固な“勁草”であるかがうかがい知れるそのエピソードを挙げて、バイスキャプテンの一人として「信頼している」と開幕前に話していた。
その1カ月後となるこの日、今度は山口自身が“疾風”となる。
後半8分、GR東葛がフェーズを重ね、ゴールラインに迫っていた。山口には、その局面での展開が読めていたのだろう。あと2m、あと一つのパスでトライできるところまできたGR東葛のパスを狙いすましていたかのように、インターセプト。そのまま“疾風”のごとくゴールラインまでの98mを駆け抜けるビッグゲインだった。
本人は「足が遅いと言われているので、右から追いかけてきた相手のウイングが気になって、聞こえなかった」と言うが、インターセプトの瞬間からトライを決めたあとまでの約20秒の間、ずっとスタジアムにはこの日最大の歓声が響き渡った。相手指揮官にも勝敗を分かつ「ビッグプレー」だったと称賛されたその“疾風”は、勝利への強い意欲に周りを巻き込み、赤い旋風へと変えてみせた。
レッドハリケーンズ大阪 【©ジャパンラグビーリーグワン】
(前田カオリ)
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