問題児アドリアーノはどこへ行く=ホンマヨシカの「セリエA・未来派宣言」

ホンマヨシカ

インテルでもブラジル代表でも困った存在

アドリアーノの豪快なシュートを再び見る日はやってくるのだろうか 【Photo:アフロ】

 18日の夜に行われたセリエA第32節、首位を走るインテルが敵地で2位のユベントスに1−1で引き分けた。この結果、インテルは6試合を残して2位(ユベントス、ミラン)との勝ち点差を10ポイントのままとし、4連覇という偉業達成へ大きく前進した(2005−06シーズンは不正疑惑でユベントスのタイトルがはく奪され、インテルが優勝となったために実質は3連覇だが)。今シーズンも期待を裏切った欧州チャンピオンズリーグはともかく、リーグ戦に関しては順風満帆に見えるインテルだが、チーム内部へ目を移すと、厄介な問題を抱えている。

 その問題を引き起こしているのはブラジル代表のストライカー、アドリアーノである。 2010年ワールドカップ・南アフリカ大会の南米予選のために同代表に招集されて帰国したアドリアーノは3月27日、深夜に行われた美女を交えての自宅でのパーティーで、アルコールを呷(あお)る様子がスキャンダラスに報道された。この事件が原因かは分からないが、代表戦でアドリアーノは起用されなかった。

 そしてアドリアーノは4月3日、チームメートのGKジュリオ・セーザルとともにミラノへ戻って来る予定だったのだが、消息不明で連絡が取れなくなった。インテルはアルコール依存症気味のアドリアーノをクリニックに収容させようと連絡を取ろうとしたが、同選手の事務所からは「アドリアーノは復活祭(イースター)の後にミラノに戻るだろう」との連絡を受けただけだった。

「以前のように楽しんでサッカーをやることができない」

 アドリアーノの問題について、インテルは「復活祭後に戻って来てから」と考えていたのだが、当の本人は9日に突然記者会見を開き、せきを切ったようにこれまでの思いをぶちまけた。
「以前のように楽しんでサッカーをやることができない。しばらくサッカー選手を休止する。自分自身が楽しめるようになれば再開するが、それには1カ月を要するのか、2カ月、ひょっとしたら3カ月かかるかもしれない……。イタリアはプレッシャーがきつすぎる。ミラノでは悲しみを感じるので、戻りたくない」

 さらに、以前から指摘されている裏の世界の人間との交友関係については「僕の友人たちが犯罪にかかわっているというのは本当のことではない。僕の生まれた地区には麻薬密売人が確かにいるが、僕は付き合っていない」と否定。クリニックでの治療についても、「僕は病んでいないので、医者を必要としない。ただ自分を取り巻く嫉妬(しっと)や中傷から隔離するだけで十分だ」と治療の必要性はないと明言した。
 しかし、アドリアーノが期限付き移籍で所属していたサンパウロのチームドクターによると、彼は日常的なアルコール依存症ではないが、時おり衝動的に浴びるように飲むため、精神病の治療を受ける必要があるとのことだ。

 また、インテル会長のモラッティについては「自分にとっては父親のような存在で、どんな時でもそばにいてくれた」と、これまでと変わらない親愛の情を表したが、「給料を断念する覚悟を持っている。自分にとってはお金よりも人生の方が大事だ」と2010年までのインテルとの契約を放棄したい気持ちを強調した。

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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