輝きを放った今村と菊池 影を落とした“ブログ問題”=第81回選抜高校野球・総括

松倉雄太

利府高のブログ問題に対する報道に疑問

ブログ問題で揺れた利府高。準決勝で敗れたが、最後は笑顔で甲子園を去った 【写真は共同】

 今大会21世紀枠で出場した利府高(宮城)は野球以外の部分で大きく揺れた。主力選手の1人が個人ブログで、相手チームを侮辱するような発言をしたためだ。

 3月30日に緊急会見が行われ、日本高野連は、利府高に対し口頭で厳重注意を与えた。しかし事は簡単に収まらず、翌日、東京のスポーツ紙で1面に取り上げられ、ある民放テレビ局は利府高が勝利したにもかかわらず、夕方の全国ニュースで試合の中身以上にブログの事を大きく扱った。想像以上の騒ぎになったことには日本高野連も困惑。もちろん相手を侮辱した行為は許されることではない。しかし、この選手は重大さに気づき2日後にこのブログの書き込みを削除している。なのに、過剰な報道が見られたのは残念だ。ニュース性はあるが、報道する側に大きく取り上げる必要性があるのかは疑問。罪を犯したかのように扱い、この選手の将来に傷をつける可能性を考えれば、安易な報道は慎まなければならない。

 インターネット上のブログなどは、不特定多数の人に閲覧される。軽い気持ちでの書き込みでも、大きな騒ぎになるかもしれないということを、球児を含めた全国の子供たちに認識してもらいたい。そうでなければ、今回のような事は、近い将来再び起きてしまうだろう。
 今回の一件で動揺をしながらも、ベスト4まで進出した利府高の健闘を素直にたたえたいと思う。甲子園3勝で得た自信を夏の大会に生かしてもらいたい。

夏に向けて勢力図はどのように変化するか

 今大会通じての総失策数66、四死球206はここ10年では最少。守備側からすれば、無駄な走者を出さなくなった数字と胸を張っていいだろう。中でも、秋の公式戦の平均失策数が少なかった報徳学園高(兵庫)、開星高(島根)、中京大中京高(愛知)の3校は、評判どおりの守備で観客を沸かせた。堅実な守備の積み重ねが、ファンを魅了するファインプレーにつながるのだということをあらためて確認できた。

 また、興南高(沖縄)の島袋洋奨、福知山成美高(京都)の長岡宏介、PL学園高(大阪)の中野隆之の3投手は、いずれも勝ちに等しい好投をしながら、味方の援護がなく敗れ去った。好投手を擁していても、点を奪えなければ勝てない。この3校は、全国の高校への大きな見本になったのではないだろうか。

 今大会は昨秋の明治神宮大会4強(慶応高、天理高、鵡川高、西条高)がすべて初戦で敗退。これは、一冬の努力で、秋の勢力図は簡単に変わるということを証明した結果と言えるだろう。昨年、春夏連続で甲子園に出場したのは9校。優勝校(沖縄尚学高)も準優勝校(聖望学園高)も夏は甲子園に戻って来れなかった。夏の地方大会開幕(トップは沖縄)までわずか2カ月あまり。現在の勢力図がどのように変化するのだろうか。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント