ACL連覇へ、王者G大阪が抱く誇りと闘志=FCソウル 2−4 G大阪

下薗昌記

G大阪の新たな得点現として存在感を示しているFWレアンドロ(右) 【Getty Images】

 前年王者として全アジアの列強から追われる立場のガンバ大阪が、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)で好発進した。ホームで迎えた開幕戦の山東魯能戦に続いて、グループFで最強のライバルと目されるFCソウルを敵地で下し、2連勝。まだ2戦を終えた段階ながら、チームの総意であるグループ首位突破を確実に視界にとらえている。

クラブ史上屈指の陣容で再びアジア王者へ

「あのステージ(FIFAクラブワールドカップ/FCWC)にもう一度帰りたいのは、僕だけではない」(西野朗監督)
 中国王者をホーム万博記念競技場に迎えた予選リーグ初戦を前に、昨年体感したひのき舞台への思いを口にした指揮官だったが、あくまでも予選リーグ突破を目標に置いた昨年と異なり、今大会は「確実にFCWCを見据えないと去年以上の結果にはならない」と、連覇を現実的な目標に置く。

 アウエー全勝という圧倒的な戦いぶりを見せたACLに続くFCWCでも、マンチェスター・ユナイテッド戦を筆頭に十分な攻撃性を発揮したG大阪。しかし、「小さいようで大きな差」だった世界基準とのギャップを埋めるべく、クラブも「攻め」の姿勢を保ち続けている。昨年の課題でもあった前線の決定力にテコ入れを図ろうと、レアンドロとチョ・ジェジンの強力ストライカーを獲得した一方で、最終ラインにも高木和道とパク・ドンヒョクの日韓代表経験者を加え、クラブ史上屈指の層の厚さが実現した。

 1月末の新体制発表会見で、「スタートの11人を選ぶのが究極の選択」と西野監督はうれしい悲鳴を上げたが、これは決して大げさな表現ではない。ただ、新外国人FWや不動の右サイドバック加地亮がキャンプ中のけがで合流が遅れたこともあり、練習試合では1分け5敗と未勝利だったばかりか、「富士ゼロックス・スーパーカップ」では鹿島アントラーズに0−3で完敗した。

 一方で、大黒柱の遠藤保仁は「新戦力とは合わせるどころか一緒にさえやっていないが、問題はない」と意に介さなかったが、大黒柱の自信はJリーグの開幕戦で証明された。加地の負傷退場というアクシデントで急きょ投入されたチョ・ジェジンとレアンドロが、いきなりのアベック弾を決めてジェフ千葉に快勝、流れを好転させたままホームでの山東魯能戦を迎えることになる。

不安を抱える中で迎えた山東魯能戦

「去年は引き分けで入っているので、今年は勝ち点3を取る」(遠藤)
「初戦で苦しんだので気を引き締めて戦いたい」(山崎雅人)
 チョンブリにまさかのドローを喫した前回大会初戦の反省を繰り返すまいとピッチに立ったG大阪だが、この日の先発メンバーは3日前の千葉戦に快勝したメンバーからガラリと顔ぶれが変わり、ターンオーバーに近い顔ぶれ。「目先の試合でなく先を見据えないといけない」と、指揮官は必須である勝ち点3を求めるゲームにもう一つの大きな課題を課していた。

 チームの唯一のアキレス腱である加地のバックアップ探し――。千葉戦で全治6週間の負傷を追った加地の代役として安田理大を右にコンバート、やや守備面で不安を抱えたチームだったが、立ち上がりから中国王者に力の差を見せ付ける。
「ホームだし、いろんな面でプレッシャーをかけていく戦いを、ボールが半回転した瞬間から全員が人にボールに、ゴールに入って行かせる」(西野監督)
 G大阪はキックオフと同時に、レアンドロと山崎が前線から猛烈なプレスを仕掛け、チーム全体の守備意識を披露した。

 山口智が「去年の優勝は僕の中では終わったこと。今年はまたチームも違う」と口にするように、今年のG大阪は“違う”。アウエー戦でさえも攻撃力で押し切ったそのイメージからは、「イケイケ」を志向する印象が強い大阪の雄だが、本格的に4バックを導入した2007年以降のチームが目指すのは、プレッシングを軸とした攻守においてバランスの取れたサッカーだ。

「G大阪と戦うのはそれほど難しいことではない」と、戦前は精いっぱいの強がりを吐いた山東魯能のトゥンバコビッチ監督だったが、立ち上がりから両者の力量の差は明らかで、G大阪が攻勢に出る。
 しかし、「ブラジルでコパ・リベルタドーレスがFCWCにつながるのと同様に、ACLも重要な大会。戦うのが待ち遠しい」と、自身初のACL参戦に意気込むレアンドロが前半に先制点を奪うものの、今大会の使用球にやや戸惑ったチームは押し込みながらもパスミスを繰り返し、後半はややペースダウン。相手のカウンターを受ける場面もあったが、それでも決定機は許さず、遠藤のPKなどで3−0と快勝し、義務ながら決して簡単ではない勝ち点3を手にした。

 中3日で迎えたJリーグ第2節のジュビロ磐田戦も4−1で圧勝したG大阪だが、内容に関してはシュート数で7−10と相手を下回り、決して押し込んだ末での勝利ではなかった。ただ、磐田相手に見せたしたたかな戦い方は、続くACLの大一番、FCソウル戦に期待を抱かせるものだった。

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著者プロフィール

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

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