ACL連覇へ、王者G大阪が抱く誇りと闘志=FCソウル 2−4 G大阪

下薗昌記

遠藤「FCソウルが一番強かった」

FCソウル戦ではサイドの攻防が勝敗の鍵を握った 【Getty Images】

「スピードもあり、技術力もある。非常に躍動感あるチームスタイル」。前日会見でアジア最優秀監督が賞賛したように、韓国の雄はグループFにおける最強のライバルだ。率いるトルコ人指揮官のギュネス監督も02年の日韓W杯で母国を3位に導いた名将で、監督同士の力量も互角。JリーグとACLで3連勝と勢いに乗るG大阪において、加地の不在に伴う右サイドバック安田理と左サイドバックの下平匠の守備力の不安が、ここまでの3試合では露呈することはなかったが、強力なサイドアタックを誇るFCソウルは、前評判通りの力を発揮する。

 G大阪は昨年、アウエー全勝という破天荒な戦いぶりを見せたが、「相手がオフェンシブに戦う中では自分たちのスタイルを出しやすい」(西野監督)。“アウエーでは手堅く”という定石を持ち込まない指揮官の姿勢は、この日も健在だった。
 昨年の大会で5得点を奪った「ACL男」山崎を、右の攻撃的MFで起用する初の布陣で挑んだG大阪だが、大一番で西野さい配がズバリと当たる。レアンドロがキム・チゴンに高い位置からプレスをかけて奪ったボールを、最後は2列目で待ち受けていた山崎が芸術ボレー。山口は狙い通りの得点を「1点目はまさしくプレスでミスを誘ってのシュート。周囲は『超攻撃』とばかり言うけど、守備あっての攻撃なので」と振り返る。

 しかし、ここからFCソウルの本領発揮だった。やはり付け込まれたのがG大阪の両サイド。右からイ・チョンヨンが、左からアジウソンやキム・ジウが絡み圧力をかけてくる。
 遠藤も言う。
「相手は韓国代表も多いし、去年からのACLを含めても一番強かった」

G大阪に内在する危機感と競争意識

 韓国にありがちなパワーサッカーではなく、パスワークと強力なサイドアタックを誇るスタイルに、生命線でもあるボール支配で遅れを取るG大阪。だが、両者で唯一決定的な違いが存在した。それは積み重ねた経験。
「この手の国際大会は、経験値が一番モノを言うんだ」(ルーカス)
 昨年、アジアを制した激戦の記憶が新戦力を除く全員の脳裏に刻み込まれている大阪の雄である。押し込まれる展開でもバタつかず、53分に懸念された両サイドのすきを突かれて一度は同点にされるものの、その後は今季のG大阪の武器が炸裂する。

「今年は高さがあるので、僕がいいボールを蹴るだけ」と遠藤が認めるとおり、千葉戦以降の3試合ではCKが確実に得点につながっている。61分のCKでレアンドロが4戦連続弾で突き放すと、74分はG大阪の真骨頂であるパスワークでチョ・ジェジンからのパスをレアンドロが決めて追加点。83分にも新外国人コンビの連係からレアンドロがハットトリックを完成し、敵地で堂々のゴールラッシュを演出して見せた。

 終了間際の失点は余分だったが、最大のライバル相手に敵地で勝ち点3という最高の結果について、山口は「大事な勝利に変わりないが、一つ一つ積み上げるだけ」とあくまでも慎重さを崩さない。
 昨年、FCWCで3位となったベースが残るチームに早くも今季の新戦力が攻守でフィットしつつある前年王者は、「ガンバ強し」の印象を残しつつある。

 そんなチームの強さの秘密を、FCソウル戦翌日のクラブ練習場に見た。帰国直後の練習で、出場時間がなかったり、短かったりした高木や播戸竜二、佐々木勇人ら十分レギュラー格の選手たちが鬼気迫る表情でミニゲームに取り組んでいたのだ。「去年以上に短い時間で結果を出さないといけない」と、山東魯能戦で出場直後に強烈ミドルをたたき込んだ佐々木は、危機感をにじませる。
 山口はそんな競争意識の高さをこう証言する。
「今年は紅白戦の質が違う。今までなかったハイレベルな駆け引きを練習から感じながらやっている。でも、チームが厚みを増すためにはそれが必要だから」

 経験値を兼ね備えた現有戦力に加えて、負傷離脱の二川孝広と加地もいずれチームに復帰する。「まだ一回りもしていないし、まだ気を抜かずにやりたい」(遠藤)。王者に驕(おご)りなし――。日本勢初のアジア連覇に向けて、G大阪が着実に、そして力強く歩みを踏み出した。

<了>

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著者プロフィール

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

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