イングランド対イタリア、欧州での覇権争い=UEFAチャンピオンズリーグ2008-09

3試合もある「イングランド対イタリア」

モリーニョ監督(右)はチェルシーで果たせなかったCL制覇をインテルで目指す 【Photo:アフロ】

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦が24日と25日に、いよいよスタートする。中でも、最も熱い視線を向けられているのが、イングランド勢とイタリア勢が対決する3試合。対戦カードは以下のとおりである。

インテル(イタリア) vs. マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
アーセナル(イングランド) vs. ローマ(イタリア)
チェルシー(イングランド) vs. ユベントス(イタリア)

 それ以外の試合は、誰もがある程度は予想できるだろう。例えば、バイエルンはスポルティング・リスボンを下すだろうし、ビジャレアルがパナシナイコスに大勝することは間違いない。そして言うまでもなく、陰りが見え始めたリヨンがバルセロナに勝つとは到底考えられない。そうして考えると、注目はズバリ、上記の3試合。「イングランド対イタリア」となる。

 考えてみれば、優勝候補の一角と言われるマンチェスター・ユナイテッド(マンU)をはじめとするイングランドの3チームが、トーナメントの早い段階でイタリア勢とばったりと顔合わせするのも、なかなかに珍しいことだ。ファンとしては「おいしいもの(=強豪同士の対戦)は、なるべく最後に取っておきたい」と考えるのは当然であるが、こればかりはどうしようもない。むしろ「抽選会では不正行為がなかった」と考えるべきなのかもしれない。

 イタリアとイングランドといえば、その国内リーグは「世界最高峰」とされている。ただし、イタリアのセリエAは「かつての」世界最高峰であり、現在は、クラブの豊富な資金力とタレントの流入に下支えされたイングランドのプレミアリーグこそ、間違いなく世界で最も魅力的なサッカーを披露している(もちろん、異論もあるだろうが)。
 では、両国をCLでの戦績で比べると、どうなるか。過去10シーズン、イタリア勢がCLを制覇したのは2回。一方のイングランド勢は3回で、わずかに後者が前者を上回る。イタリア勢の2回(2002−03、06−07シーズン)は、いずれもミランによるものだが、彼らは今シーズン、戦いの場をUEFAカップに移している。

 ミラン以外のイタリアのチームでは、02−03シーズンにユベントスが準優勝したのが1回(決勝でミランに敗れている)。インテルとローマは、この10シーズンで一度も決勝の舞台に届いていない。対するイングランド勢は、マンUが2回(1998−99、2007−08)、リバプールが1回(04−05)、それぞれ優勝している。単純に数字だけを見れば、イングランド勢の優位は明らかである。
 とはいえ、もちろんこんな数字が、何の価値を持たないことは皆さんもご存じの通り。過去は過去。単純なデータで惑わすのは、サッカーくじの世界だけにしておくべきだ。

リーグ戦10連勝のマンUに“マンUキラー”のモリーニョが挑む

 それにしても、昨シーズンのCL王者マンUが、今季インテルと対戦することを、いったい誰が予想しただろうか。結果として、リーグ首位を独走するチーム同士が、欧州の舞台で雌雄(しゆう)を決することとなった。

 ファーガソン監督率いるマンUは、今まさに絶好調だ。現在リーグで10連勝。さらにGKのファン・デル・サールは、ここ14試合、実に1302分間も無失点記録を更新中である。一方で、不安材料もある。守備の要、DFビディッチの出場停止だ(昨年12月、横浜で行われたクラブワールドカップ決勝で退場処分を受けたため)。ただ、マンUには知名度はそれほどないが、安定したパフォーマンスを見せるエバンスが健在。この若き北アイルランド代表は、ファーディナンドが故障中、十分すぎるほど存在感を示して、ファーガソン監督の信頼を勝ち取っている。

 攻撃面では、ルーニーの復帰も大きな強みとなる。中盤の選手は素晴らしく、特にワンツーパスを多用した攻撃は、どんな相手にも効果絶大なのは証明済みだ。だが、それ以上にマンUのアドバンテージとなるのが、第2戦をホームで行えることだろう。サポーターの声援に後押しされて、ゲームプランを組み立てやすくなるのも、彼らにとっては大きなメリットとなる。

 対するインテルも黙ってはいない。波に乗ったら手が付けられないFWのイブラヒモビッチとアドリアーノの2トップは、脅威以外の何物でもないし、知将モリーニョ監督の存在は対戦相手にとって不気味そのもの。ちなみに03−04シーズンには、モリーニョ率いるFCポルトが、決勝トーナメント1回戦でマンUを撃破している(第1戦はホームで2−1、第2戦は1−1)。その後もFCポルトの快進撃は続き、最終的には栄光のタイトルを手にしたことは記憶に新しい。だが、欧州の頂点に上り詰めて以降、モリーニョはツキに見放され続けた。チェルシーを率いた3シーズンは、いずれもCLのタイトルを獲得することなく、最後はシーズン途中でクラブを去ることとなった。

 話をインテルに戻す。CLでのインテルは必ずと言っていいほど、どこかでつまずく。そう、CLとインテルの相性は極めて悪いのだ。ここで「モリーニョの悪運、再び」となれば、もうどうしようもない。
 それでは、勝負の行方はどちらに? 私事で申し訳ないが、どちらが勝ち進んでも、わたしなら素直に喜べる。なぜならマンUのビディッチ、インテルのスタンコビッチ、そのいずれかが、必ずベスト8に残るからだ。ベオグラード在住で、セルビア代表を応援しているわたしにとって、応援すべき同胞の選手が春先までCLでプレーしているのは、この上ない喜びである。

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著者プロフィール

1961年2月13日ウィーン生まれ。セルビア国籍。81年からフリーのスポーツジャーナリスト(主にサッカー)として活動を始め、現在は主にヨーロッパの新聞や雑誌などで活躍中。『WORLD SOCCER』(イングランド)、『SID-Sport-Informations-Dienst』(ドイツ)、日本の『WORLD SOCCER DIGEST』など活躍の場は多岐にわたる

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