力と経験の差で圧勝した前橋育英=高校サッカー2回戦

平野貴也

武蔵工大二の経験不足を突いた2点目で勝負あり

チームの勝利に貢献した前橋育英のMF中美慶哉 【たかすつとむ】

 群馬の虎が存分に力を見せ付けた。相手がしめたと思った矢先に先制打を浴びせると、前半のうちに2点目を奪って突き放し、後半にはとどめの3点目をたたき込んでみせた。
 黄色と黒のユニホームをまとうのは、全国大会の常連校で、J1横浜F・マリノスの松田直樹ら数多くのプロ選手を輩出している前橋育英(群馬)。ブラスバンドを筆頭とする大応援団の声援に押され、今大会初出場で初めて2回戦のピッチを踏んだ武蔵工大二(長野)を完全に制圧した。

 アップセットの期待は、あっさりと裏切られた。武蔵工大二の高橋裕之監督は「立ち上がりから15分はよかった。このまま(相手が)ズルズルといくんじゃないかと期待したんだけどね。その矢先にやられました」と試合を振り返り、肩を落とした。4−5−1の手堅い守備で相手を受け止めて反撃の一発を見舞うプランは、前半17分に音を立てて崩れた。
 風上に立った前橋育英が縦にボールをつなぐと、FW西澤厚志の放ったシュートはループ気味にGKの頭上を越えてゴールイン。武蔵工大二は、後半には風上に立つだけに、1点で食い止められればまだ勝機は残っていたが、唐突に点を失った状況から立て直すだけの力は備わっていなかった。ディフェンスラインを束ねる主将の本間優之は「スッキリしない形の失点で動揺してしまった」と、先制点を奪われて浮き足立ったことを認めた。

 経験で勝る相手が、その変化を見逃すわけはなかった。前半29分、前橋育英の攻撃的MF佐藤穣が、縦横無尽にパスを回されて足が止まった武蔵工大二の守備陣をドリブルで切り裂く。佐藤がマーカーを振り切ってセンタリングを送ると、あろうことかゴール前に上がってきたMF中美慶哉は完全にフリーとなり、落ち着いてゴールへ押し込み追加点を奪った。

会場に残された好ゲームの予感

前橋育英は3回戦で市立船橋を破った香川西と対戦することが決まった 【たかすつとむ】

 後半に入っても、前橋育英の攻撃は止まらない。地力の差はますます明らかになっていく一方だった。中盤では、前橋育英のフィールドプレーヤーが1対1の競り合いをことごとくマイボールとし、相手の選択肢を根こそぎ刈り取った。ワイドにアタッカーを置いてピッチを広く使いながら、前線では2トップが巧みに前後のポジションチェンジを繰り返し、サイドバックやボランチが前線の選手を追い越していく。
 後半11分には、積極的に攻撃参加を繰り返していた左サイドバックの笛田祥平が縦のワンツーを繰り返して攻め上がり、クロスボールを供給。これをMF米田賢生が頭で押し込んでダメ押しの3点目をマークした。

 前橋育英の山田耕介監督は「1回戦に比べてパスが回るようになったのはいいけれど、シュートを打てるところでもパスを回していた。最終的な目的はゴールなのだから、打たなければ。あれでは、(ボールを)奪われてカウンターを食らう形へつながってしまう」と、快勝の裏に潜む危険性を厳しく指摘。だが、この日の試合内容は、今後の戦いを十分に期待させるものだった。

 3回戦へ駒を進めた前橋育英の次戦の相手は、この日同じ会場で高校総体王者の市立船橋(千葉)を見事に破った香川西(香川)。決戦の地は変わらず、市原臨海競技場となる。日の陰ったスタンドには観客の姿がなくなったが、ピッチ上には両校の好ゲームの予感が満ち溢れていた。

<了>
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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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