泰葉、涙の熱唱  エスペランサー復活もムタ命がけアシスト

高木裕美

ムタがエスペランサーを魔界に引きずり込み、命がけでボノちゃんを守る 【t.SAKUMA】

 ハッスル年間最大のビッグイベントとなる30日の「ハッスル・マニア2008」有明コロシアム大会では、満員となる8831人を動員した。05年から毎年開催されているマニアだが、例年は11月に開催されていたのを今年は1カ月ずらし、昨年の「大みそかハッスル祭り」と合体するような形で行われた。

 今大会の模様は裏番組の激戦区となる大みそかの21時半から2時間枠で、テレビ東京系全国ネットで放送。そのため、実況席には叶姉妹や昨年のM−1グランプリチャンピオンのサンドウィッチマンがゲストに駆けつけ、アントキの猪木、ケンドー・コバヤシもリングに登場した。

 試合後の高田総統劇場では、高田総統が「小林幸子、この野郎」と、赤いスパンコール&羽飾りのド派手衣装で登場し、裏番組の国民的歌番組を挑発。最後は「どんな逆境でも人はハッスルできる」というテーマ通りに、高田総統の指揮の元、ハッスル軍、モンスター軍がノーサイドとなって、観客と共にハッスルポーズで一体となった。

47歳・泰葉がデビュー戦で感涙の勝利

泰葉が勝った! 試合後、水をかぶりながら熱唱する 【t.SAKUMA】

 第3ハッスルでは“逆境有名人”ことシンガーソングライターの泰葉がプロレスデビュー。47歳という年齢、格闘技経験がないというハンディ、そしてさまざまなトラブルによる逆境の真っただ中から、勝利という光明をつかんだ。

 泰葉は落語家の初代林家三平の次女として生まれ、81年に歌手デビュー。88年に落語家の春風亭小朝氏と結婚し、芸能界を引退したが、昨年11月に離婚したことを機に、芸能活動を再開した。離婚会見では金屏風の前で弟の林家いっ平さん、正蔵さんも同席する異例の会見を行い、「円満離婚」をアピールしたが、今年に入ってから元夫の小朝氏をブログで「金髪豚野郎」とののしったり、「切腹しろ!」といった内容の脅迫メールを数百通にも渡って送りつけるなどといったトラブルが続発。10月29日に涙の「終結宣言」を行ったが、風当たりの強い状況が続いていた。

 そういった中で「自分で落とし前をつけるため」ハッスル参戦を決意した泰葉だが、公開練習ではマネージャーの清水氏とハッスルサイドのトラブルが発生するなど、一時は参戦すらも危ぶまれる事態に。しかし、24日の後楽園ホール大会で大事なCDを叩き壊した宿敵アン・ジョー司令長官に泰葉の怒りが爆発。「おまえと戦ってやる」と逆指名し、マニアでの一騎打ちが正式決定した。

泰葉「とても辛い1年だった」

回転海老名固めでアン・ジョーを撃破した 【t.SAKUMA】

 泰葉は背中が大きく開いた黒のバトルスーツで登場。いきなりアン・ジョーの地獄突きを食らいプロの洗礼を浴びると、その後も顔面を張られ、竹刀で殴られ、カナディアン・バックブリーカーで担ぎ上げられ、片足で踏みつけられ、さらに“金髪豚野郎”ならぬ小ブタと無理やりツーショットにされるなど、まさに心身ともにボロボロにされる。

 泰葉も必死で反撃しようとローキックを打ち込んでいくが、アン・ジョーの鍛え上げられた体にはまったく通用せず。まさに一方的な殺りくショーとなりつつあった状況に飛び込んでいったのが、今年10月から担当となったマネージャーの清水氏だった。清水氏は捨て身の覚悟で何度となくアン・ジョーに飛びかかり、身を呈して泰葉を守ると、竹刀を持ったアン・ジョーをイスで殴打。そこへ「足が見えたから無我夢中で飛びついた」という泰葉が回転エビ固めならぬ、本名にちなんだ「回転海老名固め」で丸め込み、3カウントを奪取。デビュー戦を白星で飾り、約束通りにリング上で新曲「お陽様よほほえんで」を熱唱すると、観客も拍手で祝福した。

 試合終了後、囲み取材に応じた泰葉は「私には勝つことしかない。歯向かうしかなかった」という思いでこの一戦に臨んでいたことを明かし、「すべてを出し切りました」と達成感あふれる笑顔を浮かべた。「とても辛い1年だった」という今年を振り返り、感極まって号泣する場面もあったものの、「新恋人ではない」清水氏との二人三脚で勝利をつかんだことで、「来年は年女。丑年らしく、闘牛のように暴れまわりたい。新しい泰葉を期待していてください」と、48歳からのリスタートを予告した。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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