新生「カー娘」を引っ張るムードメーカー、本橋麻里

岩本勝暁

ブームを起こしたトリノ五輪

明るい笑顔と「マリリン」の愛称でおなじみの本橋麻里 【Photo:杉本哲大/アフロスポーツ】

 メダルを期待された日本人選手が次々と敗れ去ったトリノ五輪。その中にあって、日本中に驚きと感動をもたらしたのが、「カー娘」こと日本女子カーリングチームだった。

 1勝3敗で迎えた第5戦。ドラマが幕を開けた。強豪カナダから金星を奪うと、スウェーデンには延長にもつれ込む接戦を演じた。ソルトレーク金のイギリス、地元のイタリアを連破し、メダルの夢をつないだ。準決勝進出をかけた最終戦でスイスに敗れたものの、前半戦の不振を払拭(ふっしょく)する見事な巻き返し。予選敗退ながら4勝5敗で7位入賞を果たし、日本にカーリングブームを巻き起こした。

 観る者の心を打ったのは、彼女たちが見せた無垢(むく)な表情だ。
 とりわけ、ムードメーカーの本橋麻里は、愛きょうのあるポーズと「マリリン」の愛称で人気を集めた。試合前の選手紹介では、耳を引っ張り、ほおをぷっくりと膨らませて場の空気を和ませた。時には、テレビカメラに向かってウインク。しかし、ゲームが始まれば一転、まなざしは勝負師のそれに変わった。

新チームでは司令塔の役割も

 あれから3年。チーム最年少だった本橋は、22歳になった。
 小野寺歩、林弓枝らのベテランが抜け、新しく編成されたチーム青森ではスキップとともに司令塔の役割を担う「サード」を任されている。トリノ五輪から目黒萌絵が残り、新たに山浦麻葉、石崎琴美が加入。さらにかつて本橋とチームメイトだった近江谷杏菜が加わり、新生「カー娘」が始動した。

 敵のガードストーンを弾き飛ばす得意の「マリリン・ショット」は健在。12歳からカーリングを始めた豊富なキャリアも実力の証明だ。2007年にはNTTラーニングシステムズと所属契約を結び、万全のバックアップを受けてバンクーバーを目指している。
 2008年2月の日本選手権で3連覇を果たし、翌月のカナダ世界選手権では日本勢として最高成績となる4位に入った。念願がかなって、4月には日本体育大学への入学を果たした。

 だが、ここまでの道のりが、けっして順風満帆だったわけではない。バンクーバー五輪の出場権は、2007年から2009年の世界選手権で得た合算ポイントによって、上位10カ国に与えられる。日本は現在、13ポイントで7位タイ。しかし、今年11月のパシフィック選手権で3位に沈み、来年の世界選手権の出場権を逃した。アドバンテージがあるとはいえ、ここからが本橋とチーム青森にとっての正念場だ。
 夢の続きを2010年のバンクーバーで実現するために――。氷上を踊るストーンに、思いのたけを込める。

本橋麻里/Mari Motohashi

1986年6月10日生まれ。北海道北見市常呂町出身。12歳からカーリングをはじめ、中学3年で世界ジュニアカーリング選手権に出場。2005年にチーム青森に加入する。2006年のトリノ五輪で7位入賞に貢献し、「マリリン」の愛称でブレイク。その後も2007年のユニバーシアードで銅メダルを獲得し、翌年の世界選手権で4位に入るなど、チーム青森の中心選手として活躍。バンクーバー五輪の出場を目指す。NTTラーニングシステムズ株式会社所属。

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著者プロフィール

1972年、大阪府出身。大学卒業後、編集職を経て2002年からフリーランスのスポーツライターとして活動する。サッカーは日本代表、Jリーグから第4種まで、カテゴリーを問わず取材。また、バレーボールやビーチバレー、競泳、セパタクローなど数々のスポーツの現場に足を運ぶ。

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