新生「カー娘」を引っ張るムードメーカー、本橋麻里
ブームを起こしたトリノ五輪
1勝3敗で迎えた第5戦。ドラマが幕を開けた。強豪カナダから金星を奪うと、スウェーデンには延長にもつれ込む接戦を演じた。ソルトレーク金のイギリス、地元のイタリアを連破し、メダルの夢をつないだ。準決勝進出をかけた最終戦でスイスに敗れたものの、前半戦の不振を払拭(ふっしょく)する見事な巻き返し。予選敗退ながら4勝5敗で7位入賞を果たし、日本にカーリングブームを巻き起こした。
観る者の心を打ったのは、彼女たちが見せた無垢(むく)な表情だ。
とりわけ、ムードメーカーの本橋麻里は、愛きょうのあるポーズと「マリリン」の愛称で人気を集めた。試合前の選手紹介では、耳を引っ張り、ほおをぷっくりと膨らませて場の空気を和ませた。時には、テレビカメラに向かってウインク。しかし、ゲームが始まれば一転、まなざしは勝負師のそれに変わった。
新チームでは司令塔の役割も
小野寺歩、林弓枝らのベテランが抜け、新しく編成されたチーム青森ではスキップとともに司令塔の役割を担う「サード」を任されている。トリノ五輪から目黒萌絵が残り、新たに山浦麻葉、石崎琴美が加入。さらにかつて本橋とチームメイトだった近江谷杏菜が加わり、新生「カー娘」が始動した。
敵のガードストーンを弾き飛ばす得意の「マリリン・ショット」は健在。12歳からカーリングを始めた豊富なキャリアも実力の証明だ。2007年にはNTTラーニングシステムズと所属契約を結び、万全のバックアップを受けてバンクーバーを目指している。
2008年2月の日本選手権で3連覇を果たし、翌月のカナダ世界選手権では日本勢として最高成績となる4位に入った。念願がかなって、4月には日本体育大学への入学を果たした。
だが、ここまでの道のりが、けっして順風満帆だったわけではない。バンクーバー五輪の出場権は、2007年から2009年の世界選手権で得た合算ポイントによって、上位10カ国に与えられる。日本は現在、13ポイントで7位タイ。しかし、今年11月のパシフィック選手権で3位に沈み、来年の世界選手権の出場権を逃した。アドバンテージがあるとはいえ、ここからが本橋とチーム青森にとっての正念場だ。
夢の続きを2010年のバンクーバーで実現するために――。氷上を踊るストーンに、思いのたけを込める。