トリノ五輪で躍り出たシンデレラガール、藤森由香
トリノ五輪では好成績とアイドル並のルックスで注目を集めた藤森由香 【佐藤浩之】
大健闘の成績も「悔しい」
しかし、レース後の第一声は意外にも「ムカつく」だった。納得のいかない自分の滑りに、19歳の無垢(むく)な少女は素直に苛立(いらだ)ちを表したのだ。
「悔しいです。でも、自分の実力がそこまでだったということ。世界のトップ選手たちの中での7位はうれしいけれど、準々決勝もラッキーだった。もっともっと実力をつけて、1位で通過できるように頑張りたい」
アイドル顔負けのルックスと、芯の通った強さ。藤森由香の名は、スノーボードクロスの魅力とともに、一気にその知名度を広めた。
目指すはバンクーバー五輪
「雪上のモトクロス」と呼ばれるスノーボードクロスは、ジャンプ台やバンクなどの障害物が設けられたコースを4〜6名で滑り順位を競い合う過酷な競技。複数の選手が一度に滑走するため接触や転倒も多く、スピードだけでなく相手との駆け引きやコースを読む戦略が要求される。ダイナミックでスリリングな試合展開がときに番狂わせを引き起こすことも、多くのファンを惹(ひ)きつける要因だ。
中学生になった藤森はシリーズ戦で総合優勝を果たし、プロに交じって数々の大会に出場した。メキメキと頭角を現すと、高校2年でナショナルチームに選ばれワールド・ジュニア・チャンピオンシップに参戦。18歳で初めてワールドカップに出場し、オリンピックの出場をその視野にとらえた。
トリノ五輪が終わっても、国内外を転戦する多忙な日々を過ごしている。2007年は富良野で行われたワールドカップで7位、今年は韓国大会で8位に入るほか、全日本選手権でも優勝を果たした。
愛らしい“ゆっちスマイル”は健在。トリノのシンデレラガールが、1年後のバンクーバーで主役に躍り出る。