アスレチックスvs.Rソックスに見た日本開幕の難しさ
観光気分が抜けない日本開幕戦
東京ドームで笑顔を見せるレッドソックスのオルティーズ(左)とルーゴ 【Getty Images】
試合前は、それをロッカーのネームプレートに貼り付け、試合後は鼻につけて遊んでいたオルティーズ。「それを日本で買ったとかアメリカで言わないでね、恥ずかしいから」とお願いしたが、「ガハハ」と一蹴される。「パペルボンに口止めをしておけ」と言われたが、それは不可能。そんなお願いをすれば火に油を注ぐようなものである。
26日の試合前、パペルボンは「マッサージパーラー云々」の話をしていた。「行ったの?」と聞けば
「今回は行く時間がないんだよなあ、チクショウ」
じゃあ、「マッサージって何のことか分かってるの?」と返せば
「Oh, yeah! Believe me」(もちろんだ、信じろ)
まったく、どこから情報を得たんだか。
そんなことが象徴するように、今回の日本開幕戦は、2004年のヤンキース対デビルレイズ戦に比べやや緊張感がなかったように思う。観光気分とまでは言わないけれど、やはり選手は開幕の実感を得られなかったようだ。
第2戦(26日)の先発だったアスレチックスのリッチ・ハーデンも「違和感があった」と話し、そのほか多くの選手が「確かに変な気分だった」と話している。とはいえ、そんな選手を責められない。前回の時も、アレックス・ロドリゲスなどは「開幕と言われてもなあ」と、頭をかいていた。
全体としては、アスレチックスの方がよりリラックスしていた印象。初めて見る日本に目を丸くしていた。時間があれば秋葉原、銀座に繰り出したと聞く。宿泊していた赤坂界隈でも、頻繁に彼らを見かけた。それを知るアスレチックス首脳陣の一人は「仕方がない」と苦笑しながらこう言った。
「一緒について来た家族は完全に旅行気分。彼らと移動していれば、試合に集中するのは難しい」
マリナーズ来日を粘った理由
松坂大輔の人気は、疑いようがない。しかし、彼が投げるのは1試合だけ。岡島秀樹もいつ登板するか分からない。それに対し、イチローと城島健司の出場が計算できるマリナーズというチームは、客を呼ぶ上で魅力的なのだ。
マリナーズに断られて、アスレチックスが来日。客の入りを気にした主催者の懸念は的中し、日曜の午後に行われた阪神対アスレチックスの試合などは、観客数がわずか1万6千人程度だった。値段設定に問題があると思うかもしれないが、オープン戦なら、4人で1万円のチケットが売り出された。内野指定席なら3000円程度。この設定なら極端に高いとは思えない。
ならば、問題はどこにあるのか? それを考えた時、やはり、これまでの原稿で指摘した日米の問題が考えられる。
両組織の溝――。
彼らが、協力して大会を成功させようとしない限り、こうした大イベントの成功はないのに、逆に彼らの相違を、ワールドベースボールクラシックの会見などで露呈してしまった。次回の開催があるとしたら、何より日米両事務局が協力関係を再構築しなければならない。そんな根本的な見直しがあって、次回の開幕戦はリスタートを切れると言える。
キャプテン・バリテックのプロ意識
現地から来ている記者らも慌ただしかった。試合終了後、45分後にバスが出発するという条件だったため、早々に取材を切り上げてプレスボックスに戻っていった。ちなみにチャーター機は2階建てで、2階が記者らに割り当てられ、下は選手らが使用する。その費用は750ドル(約7万5千円)だというから意外に安い。シアトルと成田の往復チケットの方が高いくらいだ。
最後になるが、時間がない中でレッドソックスのキャプテン、ジェイソン・バリテックが通路で立ち止まって答えてくれた。その中で彼のことが気に入ったのは、この一言。
「家族も楽しめましたか?」と聞けば、こう言ったのだ。
「家族は連れて来ていない」
彼にとっては、完全にオープニングゲーム。集中しようという意識がうかがえて、なぜかうれしかった。
<了>
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