メイショウサムソン、ド根性Vで最強の座に 石橋守「馬の力を信じていた」=天皇賞・春

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いったん先頭譲るも、ゴール前で差し返した!

直線のたたき合いをハナ差制した勝ちっぷりは、“雑草魂”らしい勝利だった 【スポーツナビ】

 京都名物3コーナー下りの坂を利用してスピードを上げていくと、直線入り口では早くも先頭に並んだ。見た目には早い仕掛けだが、石橋守は迷うことなく手綱を押してスパート。デルタブルース、トウショウナイトを早々と置き去りにし、これは独走態勢かと思われた。
 しかし、今年の天皇賞はここからが本当の勝負だった。インから突っ込んできたトウカイトリック、そして虎視眈々(こしたんたん)と好位で脚をためていた福永祐一騎乗のエリモエクスパイアが外からもう然と飛んできたのだ。

 この勢いにいったんは飲まれた二冠馬。「直線途中で先頭に立って、ヤッタって思った」と福永がレース後に語ったように、一度はエリモエクスパイアに先頭を譲ってしまう。だが、ここから火の出るような叩き合いでメイショウサムソンは息を吹き返す。直線最後の攻防を石橋守が振り返った。
 「勝ってくれって、それだけ思って追いました。際どい勝負だったんで、どっちが勝ったかは分からなかったんですけど、この馬は本当にえらいですね。言葉では言い表せないくらいうれしいですし、サムソンには心から『ありがとう』って、それだけです」

 ゴール前で差し返し、ハナ差リードを死守して1着。決して良血ではなく、セリ市での取引も低価格。そして、どちらかと言えば渋い騎手生活を送ってきた石橋守とのコンビから“雑草魂”と呼ばれたメイショウサムソンらしい、ド根性のGI3勝目だった。

相棒を信じる絆が生んだ勝利

 ダービー後は勝ち星を挙げることができず、二冠馬でありながら秋は同期の無冠ドリームパスポート(骨折休養中)に全レースで先着を許すという苦難の連続を味わったメイショウサムソン。また、3000メートルの菊花賞で4着に敗れたことで、レース前には距離限界説もささやかれていた。

 だが、石橋守は「距離に関してはマスコミさんが言っていただけで、僕はそんなことはないという気持ちで乗った。馬を信じていました」と雑音をシャットアウト。そして、この日つかんだ春の盾は、石橋守とメイショウサムソンの絆の勝利と言ってもいいだろう。石橋守は胸を張って語った。
 「菊花賞ではああいう形で負けてしまって、本当に悔しい思いがあった。だから長距離戦でどうしても勝ちたかったんです」

初GI勝利の高橋成師、人馬ともさらなる成長を約束

今年2月までメイショウサムソンを管理していた瀬戸口元調教師(右)が、GI初勝利の高橋成調教師を祝福 【スポーツナビ】

 また、今年2月いっぱいで定年引退した瀬戸口勉元調教師から同馬を引き継ぐ形となった高橋成調教師は、まずは一つ責任を果たしたことで安堵の表情を浮かべていた。
「すでに2つの大きな勲章を持った馬だから、年度代表馬を目指さなければならない使命を授かったようなものでしたからね」
 そんな高橋成調教師をねぎらうように、この日応援に駆けつけた瀬戸口元調教師が「成ちゃん、今日は言うことなしやな」と言葉をかけると、「今日は手応えも良かったし、これならと思って見ていたよ。まだまだ古馬は混戦だから、今日の順番が変わらんように頑張ってほしいね」と満面の笑顔を浮かべた。

 しかし、高橋成調教師がホッとした笑顔をのぞかせたのはほんの一瞬。すぐに口元を引き締めて、古馬王道を突き進み年度代表馬を目指していくことを宣言した。
「これからの回復具合を見てですが、何もなければ宝塚記念(6月24日、阪神競馬場2200メートル)ということになるでしょうね。ここを勝って楽しみな面もどんどん出てくるだろうし、もう一皮向けてほしい面もある。私もこの馬とともにもっと勉強して、もっともっと強くなってほしいですね」

 ド根性と力でつかみ取った最強の座。もう簡単には手放さない。石橋守&メイショウサムソンの雑草旋風第2章がここから始まる。

<了>

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