金妍兒が2大会連続優勝! ファイナルに望みつないだ安藤美姫=フィギュア女子

辛仁夏

安藤は会心の滑りも、ジャンプに課題

表情豊かな演技で2位に入った安藤美姫 【写真は共同】

 スケートアメリカでは総合3位だった安藤が、SP、フリーとも2位で銀メダルを手にし、GPファイナル進出に望みをつないだ。GPシリーズはこの後、エリック・ポンパール杯(フランス)、ロシア杯、NHK杯と3戦残っているため、ファイナル進出が決まるのはほかの選手の結果次第に懸かっている。

 今回の中国杯でも4回転ジャンプには挑戦しなかったが、総合得点では初戦のスケートアメリカよりも上回っており、及第点の大会だったと言える。安藤も「スケートアメリカよりも表情をつけて滑ることができたし、緊張を持って演技に臨み、気持ちもスケートのことを考えてやれた。いつも2戦目が悪かったのでその失敗をしたくなかった。その意味では点数(170.88点)も良かったのでちょっと成長したかな」と、元気のなかったSPとは一転、満足そうな顔を見せた。

 狂い死ぬ大人の女性を表現しているという安藤の中国杯でのFP『ジゼル』は、前述したコメントの通り、ステップやスパイラルで感情を込めた会心の滑りだった。ただ、気がかりなのは、ジャンプだ。スケートアメリカよりはジャンプが良くなかったと本人も認めているが、冒頭の3回転トーループ+3回転ループの2つめのループジャンプがまたも回転不足と判定され、エッジを修正してきた3回転フリップも回転不足だった。4つのジャンプでマイナス評価をもらったところは、今後修正しなければいけない点だろう。

3位レピストの演技から見えたもの

 3位にはローラ・レピスト(フィンランド)が入り、自身初のGP大会でのメダルとなった。メダリスト会見に臨んだレピストは「きょうのフリーのパフォーマンスには満足しています。いくつかのジャンプで小さなミスをしましたが、演技はよくできたと思います。次のNHK杯でも頑張りたい」とうれしそうだった。

 今回のレピストが滑った内容を見て、たとえ難しいジャンプをしなくても、新しくなったルールでポイントをより多く取るためには何が必要なのかを知ることができた。レピストはSPで3回転トーループの連続ジャンプを跳び、1.40点の加点で9.40点の高得点をマークした。今回のSPで連続3回転ジャンプを成功させたのは、金妍兒と安藤、そしてレピストの3人だけ。この連続3回転ジャンプを跳んだことで、レピストはほかの選手が難しいジャンプのルッツやフリップを跳んでいる(不正エッジを取られたり、失敗したりしたおかげもあるが……)にもかかわらず、SPで3位につけた。FPでも3回転ルッツが1回転になるなど、ルッツやフリップの難度の高い3回転ジャンプを一度も跳ばず、3回転サルコーや3回転ループ、3回転トーループのジャンプで確実にポイントを重ねた。48.82点と伸び悩んだ技術点を演技構成点でカバーして逃げ切り、GP大会初の銅メダルを手に入れてみせたのだ。

 このことから改めて分かったことは、上位争いをするためには連続3回転ジャンプは必須であり、難しいジャンプの技でなくても加点を狙う確実なジャンプを跳べば勝負になることだった。それを証明してくれたレピストの銅メダルだった。

 4位はシニア2年目のアシュレイ・ワグナー(米国)。ジャンプの質はいいものを持っており、勢いのある元気な滑りが特徴のスケーターで今後に期待できる若手の一人だ。17歳のワグナーの課題はルッツジャンプ。SPもFPも不正エッジの判定を受け、減点対象のエレメンツになっている。FPの『スパルタカス』で女版勇者に扮(ふん)して躍動してみせた。全体的な印象としては、まだシニアの域には達していない演技ぶりだった。しかし、バンクーバー五輪のプレシーズンとなる今季の成長次第では、侮れない存在になるかもしれない。

 今回、残念な結果で6位に終わったのは、昨季の欧州選手権銀メダリストのサラ・マイヤー(スイス)。ジャンプが崩れており、まともに着氷できない状態だった。これほどジャンプがめちゃめちゃになってしまうと、勝負にはならず、目も当てられない散々な内容を見せた。辛うじて演技構成点で50点近い得点をマークしたのが救いとなった。

 GPシリーズ残り3戦では、浅田真央が金妍兒と同じように出場する2大会(エリック・ポンパール杯、NHK杯)とも優勝するのか、はたまた、ほかのスケーターが栄冠に輝くのか。そして金妍兒に続くファイナル出場者が誰になるのか、その行方に注目したい。金妍兒、浅田の2強を脅かすスケーターの出現を待ちたいが、果たして……。

<了>

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著者プロフィール

 東京生まれの横浜育ち。1991年大学卒業後、東京新聞運動部に所属。スポーツ記者として取材活動を始める。テニス、フィギュアスケート、サッカーなどのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材。大学時代は初心者ながら体育会テニス部でプレー。2000年秋から1年間、韓国に語学留学。帰国後、フリーランス記者として活動の場を開拓中も、営業力がいまひとつ? 韓国語を使う仕事も始めようと思案の今日この頃。各競技の世界選手権、アジア大会など海外にも足を運ぶ。

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