金妍兒が2大会連続優勝! ファイナルに望みつないだ安藤美姫=フィギュア女子

辛仁夏

最強布陣の“チーム・ヨナ”

安定感のある滑りでGPファイナル進出を決めた金妍兒 【Getty Images】

 スケートアメリカに続き、安藤美姫(トヨタ自動車)と金妍兒(キム・ヨナ=韓国)の今季2度目の対決は、予想通りの順当な結果だった。総合得点で見ても、スケートアメリカとほぼ変わらない約20点差での1位金妍兒、2位安藤というもの。ショートプログラム(SP)とフリープログラム(FP)でもその順番は変わらなかった。

 今季GP2勝を挙げて早々とGPファイナル進出を決めた金妍兒は、2006-07年シーズンにシニアデビューしてから今季で3年目を迎え、GP参戦6戦中、実に5勝と圧倒的な強さを誇っている。ライバルの浅田真央(中京大中京高)と並び、もはやその実力は世界トップと言ってもいいだろう。

 一昨季の世界選手権前に、カナダに練習拠点を置き、世界的な名選手だったブライアン・オーサー・コーチに指導を受けるようになった。プログラムの振り付けも著名なディビット・ウィルソンにつけてもらい、相性も抜群なのか、昨季も今季も金妍兒に合った素晴らしいプログラムに仕上がっている。バンクーバー五輪で金メダルを狙う金妍兒を取り巻く環境はいま、最もいい状態にあるようで、コーチをはじめ、振付師、トレーナー、マネージメントがタッグを組んだ“チーム・ヨナ”は最強の布陣になっている。

心技体がかみ合った演技

 SPの『死の舞踏』(サン・サーンス)では、黒のシックなコスチュームに身を包み、表情と身体を使って音楽を実に豊かに表現している。その高い表現能力は、見ている者を引き込み、感激させる。ただ、今回初めて3回転フリップで不正エッジの判定を下され、3回転ルッツでは回転不足を取られた。SP後のミックスゾーンでは、オーサー・コーチら関係者が、フリップの不正エッジ判定に色めき立ち、どうしてそう判定されたのか映像を確認しなければいけないと、厳しい顔を紅潮させる光景も見られた。

 公式練習から本番の試合まで、適度な集中力を持続させ、変な気負いも見られなかった。試合後はいつも「緊張している」と話す金妍兒だが、その緊張感はいい意味での緊張感のようで、試合ではうまく気持ちをコントロールしており、心技体がうまくかみ合っていた。

 FPの『交響組曲シェヘラザード=千夜一夜物語』は一昨季の安藤がSPで使用した曲。この曲を赤いコスチュームで情熱的な“ヨナ・ワールド”に観衆を引き入れながら踊ってみせた。まるで韓国の地元にいるような錯覚を受けたと、本人が言うように、韓国人も多数会場に詰め掛け、リンクに登場する金妍兒を大歓声と拍手で迎え入れた。冒頭の3回転フリップ+3回転トーループでは、スピードに乗った助走から勢いのあるジャンプを披露。この連続3回転ジャンプは、金妍兒のトレードマークと言っても過言ではないほどの武器になっており、現在の女子スケーターの中では誰一人まねのできる選手はいない。
 今回もフリップで不正エッジの「!」注意マークがついて加点が0.40点と少なく9.90点に止まったが、10点以上を狙える技だけに浅田真央のトリプルアクセルに対抗できる大技だ。課題の3回転ルッツでステップアウトして1.60点も減点されたのは痛かったが、マイナスはこのジャンプのみ。あとのエレメンツはすべて加点を取り、レベル4のスパイラルでは2点ももらっていた。

 優勝後の記者会見で金妍兒は「緊張はしたが、きょうは自信があった。ジャンプでちょっとバランスを崩したが、全体的には良く出来たと思う。進出したファイナルでも最善を尽くしたい」と話し、持病の腰痛も良くなっているようで、負傷がない限り、出場する大会で金妍兒がタイトル争いに顔を出すはずだ。12月中旬に韓国・高陽で行われるGPファイナルでは地元で3連覇を目指す。

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著者プロフィール

 東京生まれの横浜育ち。1991年大学卒業後、東京新聞運動部に所属。スポーツ記者として取材活動を始める。テニス、フィギュアスケート、サッカーなどのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材。大学時代は初心者ながら体育会テニス部でプレー。2000年秋から1年間、韓国に語学留学。帰国後、フリーランス記者として活動の場を開拓中も、営業力がいまひとつ? 韓国語を使う仕事も始めようと思案の今日この頃。各競技の世界選手権、アジア大会など海外にも足を運ぶ。

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