G大阪、揺るがないスタイルでアジア制覇に王手=ACL決勝第1戦

下薗昌記

攻撃スタイルを貫いての勝利

G大阪―アデレード 前半43分、中央からのパスを受け2点目のシュートを放つG大阪・遠藤=万博 【共同】

「佐々木を使うことで狙いが伝われば」。攻めのジョーカーを先発させることで尻をたたくことに成功した西野監督とは対照的に、ビドマー監督は「守り切る」姿勢をピッチに打ち出し切れなかった。
 中盤の底で守備を担うリードとバルビエロを負傷で欠くアウエーチームは、本来トップ下を務めるブラジル人のジエゴをボランチに配置したが、これが裏目に出た。
「ああいう攻撃的な選手はちょっと動き出しを速くしたり、フェイントをかけたりするとついてこない」と言う遠藤が、相手のバイタルエリアで自在の位置取りを見せたばかりか、ビルドアップでミスを露呈したアデレードのすきを突き、二川のインターセプトからルーカスが37分に先制。リプレーを見るかのように43分にもカッシオのパスミスを佐々木がかっさらうと、ルーカスを経由して、「ルーカスに近い位置にいようと思った」と振り返る遠藤が、浦和との第2戦の3点目を見るかのような左サイドからのファインゴールで流れを完全に引き寄せる。
「ヤット(遠藤)は最近トップ下ともFWとも言える動きを見せている」(橋本英郎)。利き足でない左足で冷徹なまでに逆サイドのゴールネットを揺さぶったシュート技術は本職のFW顔負けだったが、もはやボランチという枠組みを超えたプレースタイルを持つ背番号7なしに、前線に厚みを欠きがちな4−2−3−1の機能はあり得なかった。

 前半はG大阪の9度に対してわずか1度のシュート機しか得られなかったアデレード。2点をリードされたとはいえ、アウエーゴールを1点でも奪えば引き分けに近い価値を持つことを知るだけに、後半開始から本来の攻撃性を見せ始め、55分のドッドのシュートを皮切りにようやくG大阪ゴールに迫り出す。
 この試合の明暗を分けたのがアデレードが得た62分の決定機だった。G大阪の右サイドを崩し、もう少しでゴールという場面を作り出すが、加地亮がクリア。この日初めての得点のにおいを感じたのか、ゴール裏のアデレードサポーターたちも遅まきながらヒートアップした。

 そんな嫌な流れを受けて西野監督は、コンディションが万全ではない守備の要、明神智和に代えて遠藤をボランチに下げ、「ACL男」山崎雅人を投入して4−4−2にスイッチした。中盤のプレスを軸に今度は2トップで相手ゴールに迫る戦術の幅を見せると、68分には遠藤のCKから安田理がダメ押しとなる3点目をたたき込む。

 ガックリとうなだれるGKのガレコビッチ。2点差の負けなら第2戦目での逆転に望みをつなげると考えていたサポーターも完全に静まり返る。予選リーグでG大阪の軍門に下った国内のライバルを冷やかした「ADELAIDE ACL FINAL MELBOURNE FAIL(アデレードACL決勝 メルボルン失敗)」の横断幕があまりにもむなしく見える。

 気持ちの切れたアデレードに対して、G大阪はその後も決定機を作り出した。終了間際には遠藤が直接FKをたたき込み、完全に息の根を止めたかに見えたが、これはロニーがオフサイドポジションで関与したとの判定でノーゴール。
 アデレードの3本に対し17本のシュートで3点を奪い、完封したG大阪は「理想的な結果」(西野監督)で優位に立った。一方、敵将は「0−3という残念な結果で難しい状況になった」と脱帽の体。

「アウエーゴールを1点取ればいいので、守るのではなく今日みたいに攻めたい」と遠藤。もはや攻めざるを得ないアデレードだけに、逆にG大阪が逆手に取るチャンスは十分ある。長く険しい道のりが続いた「アジア航路」もいよいよ最終目的地のアデレードを残すのみ。タイトルはもちろんのこと、アウエー全勝優勝という過去5度のいずれの王者も成しえなかった偉業がいよいよ視界に入ってきた。

<了>

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著者プロフィール

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

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