フィギュアスケート、中国杯見どころ

辛仁夏

大会前に衝撃のニュース、男子シングル

 日本スケート連盟から4日、衝撃の発表があった。来季のバンクーバー五輪で有力なメダル候補として五輪プレシーズンの今季、最も期待されていた高橋大輔(関西大大学院)が、出場予定だった中国杯(北京)を欠場するというものだ。今季初戦となる大事な戦いを目前にした戦線離脱は、さすがに残念でならない。それも、体調不良ではなく、10月31日の練習中に右ひざを負傷し、それが靱帯(じんたい)断裂の疑いもあるという。11月7日に精密検査を受けるというが、最悪の場合、今季を棒に振る可能性もあるとか。不幸中の幸いでそれほどの負傷でなくても、おそらく、残るNHK杯(27〜30日=東京・国立代々木競技場)とグランプリ(GP)ファイナル(12月10〜14日=韓国・高陽)は出場できないと見られる。

 中国杯で優勝候補筆頭だった高橋の欠場で、男子の優勝争いは混沌(こんとん)としてきた。表彰台の真ん中に顔を出してきそうな実力者を挙げると、欧州選手権覇者のトマシュ・ベルネル(チェコ)、シニア1年目の昨季に次代を担う期待感を周囲にアピールしたステファン・カリエール(米国)あたりか。ベルネルはGP大会前哨戦となったネーベルホルン杯(9月25日〜28日)に出場したが、ジャンプの不安定さを露呈させて織田信成(関西大)との勝負に敗れ、4位と振るわなかった。それから1カ月半後となる今季GP初戦でどこまで調子を上げてきているかが鍵となりそうだ。今季4回転に挑戦するのか分からないが、トリプルアクセル(3回転半)や3回転の連続ジャンプなど、ジャンプの質がよく、安定しているカリエールは初のGPファイナル進出を目指して表彰台を狙ってくるに違いない。

ベテラン中庭の演技力にも期待

 この2人に対抗してくるのが、日本の中庭健介(パピオクラブ)、ロシアのホープ、アルテム・ボロデュリンか。トリノ五輪代表を逃した27歳のベテラン中庭は、腐ることなく今季も現役を続け、バンクーバー五輪を目指す。高橋が抜けた初戦の中国杯では、4回転を成功させ、得意の演技力をいかんなく発揮し、ぜひとも活躍を見せてほしい。
 19歳のボロデュリンは、今季の浅田真央のコーチ、タチアナ・タラソワが指導しているロシア期待の新鋭で、昨季の世界ジュニア選手権銀メダリストだ。6種類の3回転ジャンプをこなし、スケーティングの美しさにも定評がある。才能は十分に備わっているので、シニアデビューの今季、一気にブレークする可能性もあるかもしれない。
 いずれにしも、今季、ニコライ・モロゾフコーチから離れ、振付師も変えた新生・高橋が欠場して見られないのは寂しい限りだ。

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著者プロフィール

 東京生まれの横浜育ち。1991年大学卒業後、東京新聞運動部に所属。スポーツ記者として取材活動を始める。テニス、フィギュアスケート、サッカーなどのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材。大学時代は初心者ながら体育会テニス部でプレー。2000年秋から1年間、韓国に語学留学。帰国後、フリーランス記者として活動の場を開拓中も、営業力がいまひとつ? 韓国語を使う仕事も始めようと思案の今日この頃。各競技の世界選手権、アジア大会など海外にも足を運ぶ。

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