フィギュアスケート、スケートカナダ見どころ

辛仁夏

世界王者なき男子シングル

大きな注目を集めるパトリック・チャン 【Getty Images】

 昨季まで群雄割拠の男子シングルだったが、今季は予想外の展開を迎えている。何と、このスケートカナダにエントリーしていた08年世界王者のジェフリー・バトル(カナダ)と、2度の世界王者でトリノ五輪銀メダリストのステファン・ランビエール(スイス)がそろって現役を引退することを発表し、今季のグランプリ大会には出場しないことになった。世界のトップ選手だった2人が競技の第一線から退いたことで、今季の上位陣の顔ぶれがガラッと変わることは必至だろう。すでに、グランプリ第1戦のスケートアメリカでは日本の小塚崇彦(トヨタ自動車)が強豪2人を抑えて優勝するなど、次代の若手選手が台頭する予感がする。

 そこで、このスケートカナダでは、いったい誰がタイトル争いに顔を出すのだろうか。昨季、大きな国際大会ではあまりいい成績は残せなかったが、演技の内容ではスケート関係者の注目を集めていた選手がいる。それが地元カナダのパトリック・チャンだ。昨季のカナダ選手権でバトルを破って初優勝するなど、いま売り出し中の若手ナンバーワンの17歳は、基礎がしっかりしているバランスの取れたスケーターで、安定感のあるきれいなジャンプ、滑らかなスケーティングが武器になっている。今季は、観客を魅了できるように演技の幅を広げることができれば、トップの仲間入りを果たせるかもしれない。まずは、このスケートカナダでその成長ぶりをお手並み拝見といったところか。

成長著しい南里の演技に期待

スケートアメリカでは3位に終わったエバン・ライザチェク 【Getty Images】

 世界タイトル争いを繰り広げたライバル2人が退場した男子シングル界で、次は自分の出番だと強く思っているスケーターは、前週のスケートアメリカで4回転ジャンプで転倒するなどショートプログラム1位から優勝を逃したエバン・ライザチェク(米国)ではないだろうか。これまでの世界選手権の最高成績は2度の銅メダル。バンクーバー五輪のプレシーズンにあたる今季こそは、世界王者の称号を手に入れたいはずだ。23歳のライザチェクは、1歳上のジョニー・ウィアー(米国)との国内での熾烈(しれつ)な争いにもさらされ、国際大会でも立ちはだかる大きな壁をなかなか打ち破れずにいる。伸び悩み気味だった実力を打開するために、今季のプログラムの振り付けを金メダリスト請負人とも言われる名伯楽のタチアナ・タラソワに依頼し、変身しようと試みている。果たして連戦のカナダで殻を破れるだろうか。

 日本からは南里康晴(ふくや)が今季初戦を迎える。やる気を見せ始めた昨季、念願の世界選手権に初出場を果たすなど、めきめきと力をつけている遅咲きの23歳は、観客を引き込む演技力が武器。ジャンプの安定感を増せば、上位進出の可能性は広がる。さらに自信をつけるためにも、今大会で何が何でも表彰台の一角に食い込みたいところだ。

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著者プロフィール

 東京生まれの横浜育ち。1991年大学卒業後、東京新聞運動部に所属。スポーツ記者として取材活動を始める。テニス、フィギュアスケート、サッカーなどのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材。大学時代は初心者ながら体育会テニス部でプレー。2000年秋から1年間、韓国に語学留学。帰国後、フリーランス記者として活動の場を開拓中も、営業力がいまひとつ? 韓国語を使う仕事も始めようと思案の今日この頃。各競技の世界選手権、アジア大会など海外にも足を運ぶ。

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