勝って兜の緒をしめよ! ロンドンへ向けての課題とは=女子レスリング
10月11〜13日、東京・国立代々木競技場第1体育館で開催された「女子レスリング世界選手権」には、41の国・地域から140名を超える選手が集結。現状オリンピックでは実施されていない3階級も含め、全7階級による世界一決定戦が繰り広げられた。
日本は北京金メダリストの吉田沙保里(55キロ級・ALSOK綜合警備保障)が8年連続世界一に輝いたのをはじめ、北京では右ひじを痛めながらも銅メダルを獲得した浜口京子(72キロ級・ジャパンビバレッジ)が世界選手権・オリンピック15大会連続出場を遂げるとともに銅メダルを死守。北京メダリストの伊調千春・馨姉妹を欠きながらも全7階級でメダルを獲得し、1987年からスタートし20回を数える大会で実に15回目となる総合優勝を成し遂げた。
選手一丸で勝ち取った快挙
傷つきボロボロになりながらも3位決定戦に挑んだ京子を、選手全員が涙を流しながら必死に応援した。優勝を決め、勝利者インタビューが終わった瞬間、一斉にマットに駆け上がり、沙保里を胴上げした。彼女たちの姿は、いつまでもファンの心から消えることはないだろう。
急務となった五輪世代を超える選手育成・強化
今大会、2003年の伊調千春以来5年ぶりに20人目の世界チャンピオンが誕生した。67キロ級で初の代表権を獲得したものの、伊調馨の欠場により63キロ級に落として出場した西牧未央(中京女子大)は金メダルを胸に「これからは世界ナンバー1の馨さんに挑戦していきます」と語ったが、オリンピック代表争いが本格化するまでの3年間でどこまで成長できるか。
世界選手権2度目の銅メダルを獲得した坂本真喜子(自衛隊体育学校)、急きょ代表に決まり初の世界選手権出場となりながらも銀メダルを獲得した67キロ級の新海真美(アイシン・エィ・ダブリュ)とともに期待が高まるが、越えなければならない壁は相当な高さだろう。
さらに下の世代に目を向ければ、マットを降りてからも普及のため奔走した京子たちのがんばりのおかげで、女子レスリングは確実に広まり、発展しているが、拠点の少なさは未だ解決されていない。
特に大学レベルでは深刻であり、今大会、登録された控え選手も含め全12選手中、中京女子大および至学館高(旧・中京女子大附属高)卒業生でないのは、京子と正田絢子(網野クラブ)、松川知華子(ジャパンビバレッジ)、佐野明日香(自衛隊体育学校)の3名だけである。
福田富昭日本レスリング協会会長・国際レスリング連盟副会長が自ら総監督となり、昨年環太平洋大学に女子レスリング部を創設。アトランタ五輪に出場し、長年男子グレコローマンスタイルの日本代表コーチを務めてきた嘉戸洋が指導を始めたが、こうした取り組みはまだほかでは見られない。
北京五輪に出場した4選手中、吉田、伊調姉妹の3名がALSOK綜合警備保障に所属するという社会人おける趨勢(すうせい)とともに、大学界も極端に偏っている。男子レスリングの名門校による女子選手の育成・強化なども合わせ、大学における女子レスリングの充実は急務だ。
底辺が拡大し、全体の底上げが図られ、常に国内でし烈な代表争いが行われてこそ、世界に冠たる“女子レスリング王国”に君臨することができる。今こそ、磐石の礎を!
「勝って兜の緒をしめよ」
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