マルセイユとリヨンに意地は見えたか=欧州CLに挑むフランス勢

横尾愛

「リヨン有利」の予想にも……

不評を買った蛍光色の黄色い新ユニホーム。赤と青、それがリヨンのカラーなのだ 【横尾愛】

 さて翌日。フランス勢の面目を保つべく、CLの舞台にリーグ7連覇中の王者リヨンが登場した。ホーム・ジェルランに迎えるのはフィオレンティーナ。FWジラルディーノにムトゥ、そして先日フランス代表からの引退を宣言したばかりのGKフレイらの戦力を擁し、しかもここ数年苦汁をなめさせられているイタリア勢にもかかわらず、大方の予想は「リヨンが有利」。CLでの経験ではリヨンの方が“先輩”だから心配ない、というわけだ。

 実際、戦前に話題になっていたのは試合そのものより、リヨンの新しい蛍光色の黄色いユニホームだった。「オーラス会長のマーケティング政略は大いに結構だが、リヨンの伝統色である赤と青に全く関係ない色を使うのはどうなのか。何よりダサい」と、最初から絶不評だったこのユニホーム。スウェーデン代表MFシェルストレムも、「僕はスウェーデン代表の黄色の方が好きだな」と控えめにメディアに語ったものである。

 ところが試合が始まると、ユニホームの話どころではなくなった。12分、右上からDFザウリが放り込んだクロスにFWジラルディーノが飛び込んでヘディングシュート。GKロリスは足を滑らせ、なす術もなく先制点を献上した。トップのフレッジに全くボールが収まらないリヨンは、42分にも右から楽々とムトゥに折り返され、フリーになっていたジラルディーノに2点目を許した。

ため息の出るような連係プレー

 致命的なミスが目立ったDFボドメールは、もともと守備的MFである。だが、昨季センターバックに相次いで負傷者が出て以来、何度もこのポストを務めていたはずなのに、この日は明らかに集中力を欠いていた。また両サイドバックも、これまた本職のDFグロッソとクレルクが故障で離脱中。困ったことに、特に左は代えの利かないポジションなのだ。DFレベイエールは左も右もできるが、残念ながら一人で両方やるわけにはいかない。本来は左MFのシェルストレムは、試合終盤にサイドバックに下がることはあったが、最初からDFとしてプレーするのはこれが2度目だったのである。

 フィオレンティーナのMFアルミロンとメロの厳しいチェックに手を焼くリヨンは60分、守備的MFマクーンを下げてMFエデルソンを送り出し、65分にはFWフレッジをFWピキオンヌに代えて息を吹き返す。
 73分、エデルソンからのスルーパスにベンゼマが走り、右のピキオンヌに送ってまず1点を返すリヨン。フィオレンティーナの選手たちはオフサイドを主張して猛抗議したが、DFザウリが左ポスト前で倒れていた中でのプレーだったため、聞き入れられず。ちょっとした騒ぎが収まった後、ベンゼマとジラルディーノにイエローカードが出された。
 続いて86分、今度は文句のつけようのないゴールでとうとうリヨンが追いつく。フリーキックのチャンスにジュニーニョは直接狙わず、意表を突いて右のベンゼマにパス。ベンゼマはニアにこれをたたき込んだ。ジュニーニョのようなフリーキックの名手の場合、「蹴らなく」ともフェイントになる。ため息の出るような連係プレーで、リヨンは勝ち点1を拾ったのである。

物議を醸すルール変更

リヨンの1点目をめぐり、両チームの間でちょっとした小競り合いが…… 【Getty Images/AFLO】

 試合後、エデルソンはのんびりとした口調で、「同点に追いついたメンタルの強さ」を強調した。だが、倒れたザウリを放置したまま続行されたプレーは、やはり論議を呼んでいる。しかし審判が止めない限り、もう以前のようにボールを自主的に蹴りだす必要はないのだから、リヨンのゴールは全く正当なものである。ちなみにこの日の主審は、ユーロ(欧州選手権)2008のイタリア対オランダ戦、DFパヌッチがゴールラインの外で倒れていたのをインプレーとみなして、FWファン・ニステルローイのゴールを認めたスウェーデン人のフレイトフェルト氏だった。

 なお、このルール変更はリーグアンでも騒がれたことがある。第3節、ナンシー対トゥールーズで、プレーを止めなかったFWディアに怒ったトゥールーズのDFチェットが、ディアに食ってかかって退場になったのだ。ナンシーのコレア監督は試合後の会見で、なぜか記者に混じって来ていたチェットに向かって、「新しいルールを教えてもらわなかったのか? 審判が何も言わなきゃ、プレーを止める必要はないんだよ」とまくしたてていた。

 だが、広いピッチで倒れた選手が重傷か否か、その判断を審判だけに任せるのはやはり危険すぎないだろうか。今までのように、選手の自主性に任せてプレーを止める方が良くはないか。この変更で、フットボールが“紳士のスポーツ”から遠ざかっていくと感じるのは、センチメンタルにすぎるのだろうか?
 それとも、試合前の「もちろん勝利」から、「よく追いついた、さすがリヨン」にメディアの論調が見事にひっくり返っているのと同じで、あまり気にしてはいけないのだろうか。

<了>

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著者プロフィール

1976年生まれ。大阪府出身。大阪外国語大学フランス語学科卒業。在学中にパリへ留学、そこで98年フランス代表の優勝を目の当たりにする。帰国後1年半のメーカー勤務を経て、現在東京のTV番組制作会社でサッカードキュメンタリーなどの番組制作に携わる。「サッカーをよく知らなくても面白い、サッカーファンならなおさら面白い」ものを書くのが信条

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