リッピ監督に課せられた新たな使命=2010年W杯欧州予選

ホンマヨシカ

暗黙の了解があったかのようなリッピの代表復帰

リッピ率いる新生イタリアは、W杯予選で2連勝と視界は良好に見えるが…… 【Getty Images/アフロ】

 マルチェッロ・リッピがロベルト・ドナドーニ前監督の後を受けてイタリア代表監督に再び就任することが明らかになったのは今年の6月26日だった。
 スイスとオーストリアの共同開催で行われたユーロ(欧州選手権)2008で、イタリアがスペインに決勝トーナメント1回戦でPK戦の末に敗退した後だった。
 2年後に迫った南アフリカで開催されるワールドカップ(W杯)の欧州地区予選を突破し、本大会で連覇に挑むためにも、前回のW杯・ドイツ大会の優勝監督であるリッピの代表監督復帰はもっとも正しい選択だったと言える。

 しかし、このリッピの復帰は、2年前にリッピが代表監督を辞任した時から、すでにイタリアサッカー協会とリッピの間で、暗黙の了解があったように思えてならない。
 リッピの代表監督復帰を阻む唯一の事態は、ドナドーニに率いられたイタリア代表がユーロ2008で少なくともベスト4以上に進出することだったと思うが、結果はリッピの思惑通りと言っては失礼だが、決勝トーナメント1回戦での敗退となった。

ほぼ予想通りの代表メンバー

 リッピ率いる新生イタリア代表は、8月20日に行われた国際親善試合のオーストリア戦で2−2と引き分けた後、9月6日と10日にW杯・欧州地区予選を戦った。
 イタリアの入ったグループリーグ8組はアイルランド、モンテネグロ、ブルガリア、グルジア、キプロスとイタリアの6カ国で構成されている。
 8月に行われたオリンピックの開会式でも参加国の多さに驚いたものだが、ヨーロッパ圏も旧ソ連と旧ユーゴスラビアの分裂で国が増加した。
 欧州地区予選では、各グループ1位は無条件でW杯本大会出場、グループ2位でも、成績上位8チームによるプレーオフ(ホーム&アウエー)が行われ、勝者の4チームが本大会へ進めることができる。
 この第8組でイタリアを脅かせる力を持っている国はちょっと見当たらない。よってよほどの取りこぼしをしない限り、イタリアの本大会出場権獲得は固いだろう。その比較的楽な第8組でのイタリアの初戦は、9月6日に行われたアウエーでのキプロスとの試合だった。
 この試合と4日後に行われるホーム(ウディネ)でのグルジア戦用に招集された選手は次の22人だった。

GK:ブッフォン(ユベントス)、アメリア(パレルモ)、デ・サンティス(ガラタサライ/トルコ)
DF:バルザッリ(ボルフスブルク/ドイツ)、ファビオ・カンナバーロ(レアル・マドリー/スペイン)、カッセッティ(ローマ)、ドッセーナ(リバプール/イングランド)、ガンベリーニ(フィオレンティーナ)、グロッソ(リヨン/フランス)、レグロッターリエ(ユベントス)、ザンブロッタ(ミラン)、
MF:アクイラーニ(ローマ)、カモラネージ(ユベントス)、デ・ロッシ(ローマ)、ガットゥーゾ(ミラン)、パロンボ(サンプドリア)、ピルロ(ミラン)
FW:デルピエロ(ユベントス)、ディ・ナターレ(ウディネーゼ)、ジラルディーノ (フィオレンティーナ)、イアキンタ(ユベントス)、トーニ(バイエルン/ドイツ)

 2年前のW杯メンバーを核に選出された22人はだいたい予想通りだと言えるが、しかし意外に思える人選もあった。
 例えば昨シーズンからの好調を今シーズンの開幕戦でも持続させていたアンブロジーニではなく、開幕戦を欠場したコンディションの良くないガットゥーゾを選出したこと、6月のユーロ2008で久しぶりに代表に選出されていたカッサーノが招集されなかったことだ。

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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