レイズが再現するか? 79年パイレーツの「We are Family」世界一
レイズを引っ張るベテラン、中堅選手たち
球団創立11年目で初のプレーオフ進出を目指すレイズの原動力は、ジェームズ・シールズ、スコット・カズミアー、アプトン、カール・クロフォード、エバン・ロンゴリアなど、将来のメジャーリーグを背負って立つ有望な若手選手たちだ。その一方で、岩村、ペーニャ、トロイ・パーシバルらの中堅、ベテランの貢献度もまた大きい。
一番打者としてチームを引っ張る岩村は、打率2割8分をマークし、チーム1位の150安打に加え、5本塁打ながら、27本塁打のペーニャ(塁打数204)、22本塁打のロンゴリア(同203)を上回り、チームトップの塁打数205を誇る。チーム2位の二塁打28本、三塁打6本が生み出した塁打の数は、一つでも先の塁を奪おうと常に全力疾走を怠らない積極的なベースランニングを証明する数字だ(記録は9月1日現在)。
ペーニャは失投を決して見逃さない驚異的な集中力とともに、相手のシフトを見透かした左方向への打球や、バントヒットを試みるなど、チームプレーに徹した姿勢も見せている。一塁守備も超一級品で、コンバートされたセカンドでゴールドグラブ級の守りを見せている岩村とともに、レイズの守備力を格段に向上させた。
アプトンやロンゴリア、ディオナー・ナバロ捕手らの主力は、爆発的な才能を見せる一方で、守備や走塁面でしばしば「若さ」を露呈することがあるが、岩村やペーニャ、フロイドらはその「指南役」も果たし、チームの一体感を見事に演出している。
そんな今季のレイズを見ていて思い出すのは、1979年に世界一に輝いたときのパイレーツだ。
MVP三冠を成し遂げたスタージェル
62年のデビュー以来、パイレーツ一筋でメジャー生活を送ったスタージェルは、本塁打王(71年、73年)と打点王(73年)に輝いて、71年のワールドシリーズ制覇にも貢献している。79年当時はそのパワーにも陰りが見えていたが、年齢、人種、国籍を問わず、チームメートにいつも兄や父親のように接して“Pop(オヤジさん)”と親しまれ、グラウンド外でも熱心に慈善活動に取り組んでいた。
そのスタージェルの下、個性派、くせ者ぞろいで、空中分解の危機を常にはらんでいたチームは見事にまとまり、当時の大ヒット曲にあやかった「ウィー・アー・ファミリー」の合言葉で快進撃を続けた。スタージェル自身も32本塁打を放って、チームを地区優勝、リーグ制覇に導いた。そしてワールドシリーズでも下馬評では不利といわれたオリオールズを4勝3敗で下して、見事世界一に輝いたのである。
傑出したチームリーダーぶりを評価され、史上最年長の39歳でMVPに選ばれたスタージェルは、プレーオフの10試合で打率4割1分5厘、5本塁打、13打点をマークしてリーグ優勝決定シリーズ、ワールドシリーズでもMVPに選出され、空前絶後の「MVP三冠」を成し遂げている。
引退後、その背番号「8」が永久欠番となり、88年には殿堂入りも果たしたスタージェルだったが、くしくも現在の本拠地PNCパークが開場した2001年4月9日に、腎臓病のため61歳でこの世を去った。
いまのレイズは、岩村、ペーニャ、パーシバルらの中堅、ベテランがまとまって29年前のスタージェルの役割を果たしている。世代や人種、国籍の違いを超えてチームが一体となっている姿も、29年前のパイレーツと重なって見える。果たしてレイズはスタージェルが率いたチームのように、世界一の美酒に酔うことができるだろうか。
<了>
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