湯元健一、“最激戦区”代表の誇り胸に「恥ずかしくない試合を」=レスリング
2006年度天皇杯・全日本選手権に山本“KID”徳郁が挑戦して一躍注目を集めた男子フリースタイル60キロ級は、強豪がひしめく日本最強の激戦区。熾烈な北京オリンピック代表争いで、最初に先頭に立ったのは湯元だった。2007年国内大会を制し、オリンピック出場権のかかった世界選手権に挑んだが、初戦で敗れ北京へのキップを持ち帰ることはできなかった。
すると、2006年大学3年生ながら世界選手権銅メダルを獲得した高塚が巻き返した。2007年12月の全日本選手権で優勝を飾ると、3月韓国で開かれたアジア選手権代表に選ばれた。高塚は2006年の世界チャンピオンを破り、決勝戦に進出。格下のインドの選手からリードを奪い、オリンピック出場権を手にしたかと思われたが、残り1秒まさかの逆転負け。せっかくのチャンスをつかみきれぬと、続く4月スイスで行われたオリンピック予選でも惜敗した。
オリンピックへの夢を諦めていた湯元にチャンスがまわってきた。5月ポーランドで開かれた世界最終予選代表に、高塚に代わって選ばれると、見事オリンピック出場権を獲得した。だが、それはあくまでも“国・地域に”与えられた出場権。湯元がオリンピック代表に決まったわけではなかった。悲願のオリンピック出場を果たすためには、国内の強敵を倒さなければならない。
第2Pラスト15秒、「無意識」の片足タックル!
2回戦から登場した湯元が、成長著しいとは言え、まだ国士館大学2年生の小田裕之に第1ピリオド、テクニカルフォールを奪われ、その後も逆転できず初戦敗退。小田は昨年この大会で優勝している大澤茂樹(山梨大学)も破り、決勝戦へ。一方、高塚はアテネオリンピック銅メダリスト井上謙二(自衛隊体育学校)との接戦をものしにて決勝戦に進出した。
湯元が「自分が立っていないことが情けない」と語ったフリースタイル60キロ級決勝戦。小田が高塚に懸命に食らいつき、1−1で迎えた第3ピリオドも0−0。ボールビックアップで有利な体勢を得た高塚が冷静に小田をマットに沈め、優勝を遂げた。
優勝の勢いに乗って高塚が勝ち、3度目のチャンスを今度こそものにして北京へ行くか。それとも、「オリンピックが目の前にぶら下がり気負ってしまったが、大会と高塚との勝負は別」と割り切り、初優勝を遂げた双子の弟・進一にも励まされた湯元が、自分が取ってきた出場権を守り抜くか。プレーオフは緊迫した雰囲気のなかでスタートした。
第1ピリオドは一進一退の攻防が続き、両者0−0。ボールピックアップで有利な体勢を得た湯元が高塚を倒し先制した。第2ピリオド、もう後がない高塚は必死の形相で攻めるが、自分の間合いにできず。試合は湯元のペースで進むと、ラスト15秒、湯元が「無意識。感覚的に入りました」と言う片足タックルからバックに回ってテイクダウン。貴重な1ポイントを奪い、北京オリンピック“代表”権を獲得した。
エース笹本に金の期待、フリー66キロ級・池松はアテネ5位以上を
エースとして期待されるのは、グレコローマンスタイル60キロ級・笹本睦(ALSOK綜合警備保障)。2006年アジア大会で優勝すると、2007世界選手権では銀メダルを獲得。今月ドイツで行われた国際大会では、アテネオリンピック銀メダリストを破って優勝し、1988年ソウルオリンピック以来となるレスリング金メダルも見えてきた。
2002年アジア大会で金メダルを獲得して以来、精神的支柱として日本チームを引っ張ってきたグレコローマンスタイル84キロ級・松本慎吾(一宮運輸)も、同じくドイツ国際大会で2005年世界チャンピオンを破り、念願のオリンピックメダル獲得に向けて心技体、絶好調だ。
グレコローマンスタイル96キロ級・加藤賢三(自衛隊体育学校)は、日本オリンピック委員会の選手団縮小によってアジア大会には派遣すらされなかった重量級の意地を見せてくれるだろう。得意の首投げが決まればメダル獲得も夢ではない。
一方、かつては日本のお家芸とまでいわれたフリースタイルは、軽量級から3選手が出場する。55キロ級・松永共広(ALSOK綜合警備保障)にメダル獲得の期待がかかるが、オリンピック2度目の出場となる66キロ級・池松和彦(K−POWERS)も前回の5位入賞を上回る成績を虎視眈々と狙っている。
そして、最後の代表に決まった60キロ級・湯元健一。プレーオフの後、50名近い記者たちに囲まれ、北京への意気込みを聞かれると力強く、次のように語った。
「高塚選手をはじめ、ライバルたちのおかげで強くなれました。これだけスゴイ階級を制したことを誇りに、北京では恥ずかしくない試合をします」
レスリング男子 北京五輪代表選手
松永共広
<フリースタイル60キロ級>
湯元健一
<フリースタイル66キロ級>
池松和彦
<グレコローマンスタイル60キロ級>
笹本睦
<グレコローマンスタイル84キロ級>・
松本慎吾
<グレコローマンスタイル96キロ級>
加藤賢三
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