チェフ「僕らは驚きを生み出せる」=チェコ代表が抱く、静かな予感

チェコ代表のゴールを守るペトル・チェフ。欧州最高峰のGKである 【Getty Images/AFLO】

●●197センチの長身に、すらりと伸びる手足――GKとしての素質を、この世に生まれ落ちたときから与えられた男、ペトル・チェフ。チェコ代表の“番人”はまだ24歳の若さだが、すでに欧州最高のGKのひとりとして認められている。

 チェフは17歳のときにフメル・ブルシャニでプロデビューを果たすと、その2年後には名門スパルタ・プラハに移籍。チャンピオンズリーグ(CL)で活躍を見せるやいなや、翌年にはフランスのレンヌへ。そこで2シーズンを送った後、2004年にはついにビッグクラブのチェルシーへと上り詰めた。
 そんな順風満帆のサッカー選手人生を送っていたチェフに、不運が訪れたのは2006年秋のこと。プレミアリーグで相手選手と衝突し、頭蓋骨の陥没骨折で一時は選手生命も危ぶまれた。だが、驚異的な回復力を見せてわずか3カ月で試合に復帰し、周囲を驚かせた。チェフはそれ以来、ヘッドギアを装着している。

 20歳の時に迎えた前回大会のユーロ(欧州選手権)2004では、正GKとして攻撃的なチームを支え続け、ベスト4進出の立役者のひとりになった。ただし、今大会のチェコ代表の前評判は決して高くない。4年前にチームを支えたネドベド、ポボルスキらはチームを去り、主力のロシツキは故障のため大会メンバーにエントリーできなかった。しかし、そのような状況でもチェフは「チェコ代表の戦略の変化」を示唆し、予選でドイツを上回った自信を感じさせる。新たなサプライズの予感は、静かに漂っている●●

期待されていないからこそ、チャンスがある

――ペトル、今季のチェルシーはイングランド・プレミアリーグ2位と、CL決勝の敗北という、フラストレーションの溜まる二つの“2位”でシーズンを終えました。この失望を、どうやって克服するのでしょうか

 当然だけど、簡単なことではないよ。モリーニョ監督がやってきて以来、チェルシーは必ず何かしらタイトルを取ってきたのに、今シーズンの僕らは何ひとつ勝ち取れなかった。しかも、このように競った形で敗れることには、まったく慣れていなかったからね。終わってみれば、本当に奇妙なシーズンだった。シーズンの出だしに、モリーニョ監督解雇のドラマですべてが駄目になると思ったにもかかわらず、その後すべてに勝てるかも知れないと僕らは信じるようになったのだから。

――あなた個人の出来という面では、今シーズンをどう評価しますか?

 今季もまた故障してしまったから、あまり幸運に恵まれたシーズンとは言い難かったね。僕は特に足首、それからトレーニング中の衝突によって顔を切り、20針も縫うけがを負ってしまった……。毎試合プレーするのが普通であるGKにとって、リーグの最中に少し休むのは難しいことだ。というのも、プレーを休むと、僕の頭の中で判断の指針がどうしても少しぶれてしまうからなんだよ。

――CL決勝でのマンチェスター・ユナイテッドとのPK戦は、簡単に忘れられるものではないと思いますが……

 あの手の試合は、まるでロシアン・ルーレットのようなものだ。勝負はどちらにも転びかねない。そして不運にもわれわれは負けてしまった。終わった直後には、もう一本くらい(PKを)止められたはずだった、と思ったけれど……。でも、後の祭りだった。

――でも今、ユーロという新たな目標があなたを待ち受けています。このユーロに何を期待していますか?

 チェコ代表は、うれしい驚きを生み出せるんじゃないかと僕は思っている。誰も僕らに多くを期待していない分、いっそうチャンスがある気がするんだ。でも実際には、チェコはユーロ予選でドイツの上を行っている(グループDで、チェコの29ポイントに対しドイツが27)。だからスイス、ポルトガル、トルコと一緒の本大会のグループリーグでも、十分な警戒心を持って戦えば、僕らの目指す場所へたどり着くことは可能だと思うんだ。もちろん、それが簡単な仕事だと言うつもりはない。それでも、かなりいいところまで勝ち進むチャンスは十分にあると僕は見ているんだよ。

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著者プロフィール

1968年3月3日生まれ。『レキップ』紙を経て、98年より『フランス・フットボール』誌の記者として活躍。フランスのほかアフリカサッカーを得意分野とし、かの地に広いネットワークを持つ。特にドログバと親交が深く、取材がなくても電話で近況を報告し合う仲。2007年には同誌上でチェルシー批判を含むドログバの激白インタビューを発表し、国内外でセンセーションを巻き起こした。趣味は自分の子供と遊ぶこと、テニス、文学

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