今大会の“ダークホース”はロシア=欧州記者のユーロ2008展望 第2回
グループC:「死のグループ」 強豪オランダが敗退する理由
予想が容易なグループBと比べ、これほど予想に苦しむグループはない。このような場合、どのチームが落選候補か考えるべきだ。
仮に、ルーマニアがもっと楽なグループに属していたなら、リーグ突破の道は広く開かれていたに違いない。だが、「死のグループ」に巻き込まれた以上、ムトゥやキブーのプレーでリーグ突破を可能にするほど、このグループは甘くはない。それ以上に、彼ら以外の選手の経験、特にユーロのような大きな大会での経験の欠如は、大きな不安材料である(ユーロ2000以降、ルーマニアはヨーロッパや世界大会の出場権を逃してきた)。
次に落選候補を挙げるとすればオランダだ。確かに、予選での一連の戦いは決してよくなかった。ただ、それだけでは十分な落選理由とならない。
私が最も懸念していることは、マルコ・ファン・バステン監督と選手らの間に生じている信頼関係の“ひび”にある。マルク・ファン・ボメルはファン・バステン監督の下ではプレーしないと明言し、クラレンス・セードルフはつい先日代表を辞退したばかり。かつては、ルート・ファン・ニステルローイも代表でのプレーを拒んでいたほどだ。今大会を最後に代表監督を退任するファン・バステン監督だが、オランダが成功の道を歩むとは決して言いがたいのが私の正直な見解である。
さあ、問題は“解決した”ようだ。「死のグループ」を抜けるのはイタリア、そしてフランスだ。
グループD:不気味な存在ロシア スペインはトラウマに勝てるか
ロシアのアルシャービンは第3戦目から出場。ロシア躍進の鍵を握る選手だ 【Getty Images/AFLO】
ロシアは不気味な存在で、何か大きなことをやってのけると感じているのは私だけだろうか。確かに、ロシアは恐ろしくラッキーな形で今大会の切符を手にした(すでに本大会出場を決めていたクロアチアがイングランドを下したことで、ロシアはイングランドに勝ち点差1を逆転されることなく本大会出場を決めた)。
それでは、本大会もロシアは運頼みかと言えば、それは大きな間違いだ。世界でもおそらく1、2位を争うほどの名将ヒディンク監督をはじめ、今季、UEFAカップで優勝を果たしたゼニト・サンクトペテルブルクからも多くの有能な選手が招集された。さらに、ロシアの招集メンバーの大半が、3月に開幕したロシアリーグに所属していることから、本大会時の選手の疲労は少なく、ほかのチームより有利な立場と言える。
ヒディンク監督が絶対の信頼を寄せるエースのアルシャービンが、初戦のスペイン戦と第2戦目のギリシャ戦を欠場することは確かに痛手だ(予選最終戦の暴力行為のため)。だが、私がここまでロシアを強く推しているのも、彼が決勝トーナメントで大活躍すると確信しているからである。ロシアが勝ち上がっていったとしても決してサプライズではない。
スペインは、決勝トーナメント進出ぐらいは最低限期待してもいいはずだ。だが、それ以上を期待していいかは私には分からない。ただ、フェルナンド・トーレスやセスク・ファブレガスら選手個々の能力の高さに疑いの余地はなく、チームとしての結束力も高い。問題は伝統となりつつある自己のトラウマに勝てるかどうかだ。
グループDを突破するのはロシア。そして、スペインも可能性を秘めている。
決勝トーナメント:何が起きても不思議ではない実力無縁の世界
ただ、今大会に生き残るであろうベスト4のチームをあえて挙げるとすれば、ドイツ、イタリア、フランス(もしくはロシア)、そしてポルトガルの4チームであろう。
最も注目され、そして活躍が期待される選手はフランク・リベリー(フランス)、クリスティアーノ・ロナウド、そしてアンドレイ・アルシャービン(ロシア)だ。
大会得点王候補には、ミロスラフ・クローゼ(ドイツ)、ルカ・トーニ(イタリア)、そしてカリム・ベンゼマ(フランス)の名前を挙げておこう。
<了>