悲願の優勝はポルトガルかスペインか=欧州記者のユーロ2008展望

グループC:4カ国に死のグループを突破する可能性あり

<イタリア>
 2006年W杯でチャンピオンとなったイタリアの指揮官を引き継いだロベルト・ドナドーニは、それから2年間、チームの勝者のメンタリティーを保つことに成功した。常に前任者(マルチェッロ・リッピ)との比較にさらされながらも、独自のスタイルを示し、才能ある新戦力も代表に加えた。世界最高のGKとも言われるジャンルイジ・ブッフォンの前には、マルコ・マテラッツィ、ファビオ・カンナバーロのセンターバックが控え、アンドレア・ピルロ、ジェンナーロ・ガットゥーゾらMF陣はほぼ不動のメンバー。
 アタッカー陣は、若干複雑な様相を呈している。ファビオ・クアリャレッラ、ルカ・トーニ、アントニオ・ディ・ナターレは順当にメンバー入りし、アレッサンドロ・デルピエロ、アントニオ・カッサーノ、マルコ・ボッリエッロも代表候補に滑り込んだ。いずれにしても、イタリアがW杯とユーロのダブルを達成する確率は、かなり高いと言っていいだろう。

【予想:ベスト4または決勝進出】

<オランダ>
 クラレンス・セードルフの代表辞退という驚きのニュースもあった“オランイェ”(オランダ代表の愛称)にとって、唯一の課題は守備的MFである。そのほかのポジションには、ほかの国々がうらやむほどのタレントをそろえている。
 スタイルはいつものように、まず攻撃ありきだろう。この難関のグループCを突破することができれば、そのまま突っ走る可能性もあるのだが果たして……。

【予想:ベスト4】

<フランス>
 かねてより予想されたことではあったが、レイモン・ドメネク監督はダビド・トレゼゲをメンバーから外した。代表71キャップで34ゴールを記録しているユベントスのストライカーは、ティエリ・アンリ中心のチーム作りの煽りを受けた格好だ。そのアンリも、バルセロナに移籍した今季、ベストパフォーマンスとは言えない状態。ベテランのリリアン・テュラム、パトリック・ビエイラもコンディション不良が心配される。2006年W杯の際、本大会に照準を合わせて調整してきたジネディーヌ・ジダンやテュラムとは状況が異なる。
 フランスにとっての救いは、カリム・ベンゼマ、ニコラ・アネルカ、あるいはフランク・リベリーらが好調なことだ。とはいえ、セリエA得点ランキング2位のトレゼゲ、ガエル・クリシー、バカリ・サニャらを招集外としたことで、ドネメクは批判の渦にさらされている。“死のグループ”と言われる激戦区だけに、万一予選敗退ということになれば、解任は免れないだろう。

【予想:ベスト4または決勝進出】

<ルーマニア>
 オランダを差し置き、予選グループで首位通過を果たしたルーマニア。戦前の予想ではグループCのアウトサイダーと言わざるを得ないが、ダークホースとなる可能性も十分に秘めている。ビクトル・ピツルカの“息子たち”は予選突破できると信じており、それだけの理由がある。
 GKボグダン・ロボンツ、DFコスミン・コントラ、MFのフロレティン・ペトレ、クリスティアン・キブー、そしてストライカーのアドリアン・ムトゥと、各ポジションに経験豊かな選手をそろえ、ドリン・ゴイアン、シュテファン・ラドゥ、バネル・ニコリツァ、ラズバン・コチシュら若手も充実。不安要素としては、9日間で3試合を戦う能力が彼らにあるかどうか。それを乗り越えれば、ルーマニアが2008年のサプライズとなるかもしれない。

【予想:ポテンシャル的にはベスト4】

グループD:今大会の大本命の一つはスペイン

F・トーレス(写真左)、ビジャら強力なFW陣をそろえるスペイン。今大会の大本命の一つ 【Getty Images/AFLO】

<ギリシャ>
 ユーロ2004の栄冠から4年、69歳のドイツ人指揮官、オットー・レーハーゲルはいまだギリシャを率いている。スターなきチャンピオンのここ数カ月の心配は、アキレスけんを負傷したDFのユルカス・セイタリディス、ソティリス・キルギアコス、トライアノス・デラスら主力選手の回復具合だ。
 4年前と違い、ギリシャはもはや過小評価されることはなくなった。だからこそ、自分たちの本領を発揮しなければ、このグループを勝ち抜くことは難しいだろう。

【予想:グループリーグ敗退】

<スウェーデン>
 スウェーデンはどんなときも侮れないチームである。コンパクトなスタイルを保ち、近年はズラタン・イブラヒモビッチという名の“最終兵器”も手にしている。もしラーシュ・ラーゲルベック監督が彼と組むパートナーさえ間違えなければ(ヘンリク・ラーションかヨハン・エルマンダーか)、“イブラ”は今大会の主役候補の筆頭と言えるだろう。
 ユーロとW杯合わせて、5大会連続で国際大会出場を果たしているスウェーデン。選手からの信頼も厚い戦術家は、今大会で何か大きなことを成し遂げようとしているのかもしれない。

【予想:ベスト8またはベスト4】

<スペイン>
 間違いなく、今大会の大本命の一つがスペインだ。たとえボージャン・クルキッチやラウル・ゴンサレスがいなくとも、フェルナンド・トーレス、ダビド・ビジャを擁するアタッカー陣の威力は計り知れない。23人の最終メンバーを選考するにあたり、監督のルイス・アラゴネスはコンディションを重要視したという。その結果、ビジャレアルの中盤の要であるサンチャゴ・カソルラと、サラゴサのFWセルヒオ・ガルシアが初の代表入りを果たした。
 クラブチーム同士のライバル関係が顕著なスペインだが、もしバルセロナとレアル・マドリーの選手たちが代表のために手を携えれば、スペインは今大会こそ、1964年以来の優勝も夢ではないだろう。

【予想:ベスト4または決勝進出】

<ロシア>
 ゼニトのUEFAカップ優勝で、フース・ヒディンク率いるロシアは“メイド・イン・サンクトペテルブルク”のチームとして、もっと評価されてしかるべきだろう。だが、UEFAカップ決勝でヒーローとなったイーゴリ・デニソフは、何と代表入りを辞退。上昇気流のチームの出鼻をくじく格好となった。
 ロシアはこれまで伝統的にメンタルの弱さが指摘されてきたが、今大会もスペインとの初戦が鍵を握るだろう。タレントはそろっているが、チームはまだ若い。この種のトーナメントでは経験がものをいうだけに、ヒディンクの手腕も問われることになる。

【予想:ベスト8】

<了>

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著者プロフィール

1965年10月20日生まれ。1992年よりスポーツジャーナリズムの世界に入り、主に記者としてフランスの雑誌やインターネットサイトに寄稿している。フランスのサイト『www.sporever.fr』と『www.football365.fr』の編集長も務める。98年フランスワールドカップ中には、イスラエルのラジオ番組『ラジオ99』に携わった。イタリア・セリエA専門誌『Il Guerin Sportivo』をはじめ、海外の雑誌にも数多く寄稿。97年より『ストライカー』、『サッカーダイジェスト』、『サッカー批評』、『Number』といった日本の雑誌にも執筆している。ボクシングへの造詣も深い。携帯版スポーツナビでも連載中

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