暗闇に光を――ホークス浮上の切り札・大村が復帰

田尻耕太郎

待望の復帰も、まだ手探り状態

 4月に10年ぶりの負け越しを喫したホークスの5月反攻に向けて、待望の男が2日から1軍にやってくる。プロ通算1669安打を誇るヒットメーカー、大村直之だ。2006年には最多安打のタイトルを獲得。昨季は自己最高の打率3割1分9厘をマークし、自身9年ぶりとなるベストナインに輝いた。今季は初の首位打者取りが期待されている。

 スタートダッシュに失敗した最大の要因が打線の不振だったホークスにとって、大村の復帰は本当に頼もしい。しかし、楽観視はできない。出遅れの原因は故障だった。春季キャンプは順調だったが、オープン戦に差しかかるころに右太ももを痛めた。しばらくは1軍のオープン戦に帯同したものの患部は良化せず、逆に痛みは増していく一方だった。3月中旬にファームの教育リーグで実戦復帰を果たしたが、復帰2戦目で再発。悪循環だった。
 2度目の復帰は4月22日のウエスタン・リーグ中日戦(ナゴヤ)。そこからファームで6試合に出場した。5月1日の阪神戦(雁の巣)にも「3番・レフト」でスタメン出場。第2打席ではレフト線へ二塁打を放った。ただ、気になったのは7回終了時点でゲームを退いたことだ。出場した6試合でフル出場は1度もない。また、二塁打を放った後のプレーも気になる。三塁まで進み、その後犠牲フライでホームに生還した。大きな外野フライだったため余裕をもってホームインできるはずが、あえてスライディングを敢行した。1つ1つのプレーがまだ手探り状態なのだ。それでも、きょうから1軍の試合に出場する。

暗いベンチを照らすムードメーカー

 試合前練習で王貞治監督は「100パーセントじゃないのは聞いています。最初(スタメン)から出て途中までなのか、1スイングにかけるかはこれから相談します」と話してロッカールームへ消えていった。今の大村を昇格させるのは“賭け”だ。再発の危険性は避けられない。ただ、今のチーム状態を変えるだけの選手は大村しかいない。 持ち前の打撃力もそうだが、何より明るい性格でベンチを盛り上げてほしい。
 何人かの選手は「今はたとえ勝っていてもベンチは暗い」という。強かったホークスには大道典嘉(現巨人)や鳥越裕介、田口昌徳らムードメーカーがいた。そこで大村の出番だ。ある先発投手は「(ベンチで)大村さんは先発投手のすぐ前に座っているんですが、野次がメチャクチャ面白いんですよ。大笑いしそうになるのを、寸前のところで我慢して下を向いています」と思い出し笑いを浮かべながら話してくれた。
 きょうからの試合は、選手たちの表情にも注目すると面白い。変化が見られれば、それは浮上のサインだ。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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