魅力的なSリーグ=アルビレックス新潟シンガポール社長コラム 第2回

是永大輔
 日本において東南アジアのサッカーの印象を問えば、総じて「レベルが低い」、「プレーが雑」など、ネガティブな反応が聞こえてくるはずだ。昨年のアジアカップではベトナムの活躍(日本、UAE、カタールとのグループを2位で突破し、ベスト8進出)などがあり、若干変化を感じるものの、基本的には「目にも入らない」のが現状であろう。それらは、概論では正しい。きら星のごとくスター選手が生まれ続ける昨今の日本と比較すれば、東南アジアのサッカーのレベルは低いと言わざるを得ない。個人の基本技能しかり、それにひも付く形の戦術面もしかり(放り込みのサッカーがやけに目立つ……)。
 
 しかし、である。彼らがそれらをただ放置しているわけではない。特にシンガポールは、持ち前のオリジナリティー溢れる試みで、自国のサッカーレベルを向上させている。それは、経済を急激に発展させてきた経験と同様に、世界でも類を見ないほどユニークな展開を図っている。

マレーシアリーグから独立し、Sリーグ立ち上げへ

 シンガポールとサッカーのかかわりは意外に古い。サッカー協会の設立は1892年で、これは日本(1921年)や韓国(1928年)よりも古く、世界でも有数の歴史を持つ。一応(と言っては失礼だが)、サッカーはシンガポールの国技である。

 もともと、シンガポール代表チームは1921年よりマレーシアのサッカーリーグに所属していた。国家自体がマレーシアから独立(1965年)してからは、その歴史的背景からか、シンガポール国内で過激とも表現できる異様な盛り上がりを見せていたようだ。ある種、自国のアイデンティティーを確立するために、それが大きな役割を果たしていたことは想像に難くないだろう。現在では、シンガポール人の大半がレベルの高いプレミアリーグを観ていることもあり、自国のリーグについては皮肉を交えながら観ることが多い。それゆえ、サッカーに対しての興味の行き先は決まっている。ひとつはサッカーくじ、そしてもうひとつがナショナルチームである。現在も「好きなチームはどこ?」とシンガポール人に尋ねると「ナショナルチーム」という答えが圧倒的に多い。それは、Jリーグ開幕前の日本の状況と似通っているように感じる。

 さて、マレーシアリーグに所属していたシンガポール代表チームだが、1994年に22回目のリーグ優勝を果たしている。しかし翌年、八百長疑惑が噴出し、シンガポールは独自のサッカーリーグを設立する必要に迫られた(マレーシアリーグから締め出された、という説も根強いが……)。それをきっかけに立ち上がったのがSリーグというわけだ。

Jリーグの影響を受け、2ステージ制でスタート

 シンガポールサッカーリーグ、通称Sリーグは1996年に立ち上がった。「2010年のワールドカップに出場する」というお題目の下、自国代表チームを強化するべくプロサッカーリーグが構築された。

 Sリーグ発足の3年前、1993年に立ち上がった日本のJリーグは、Sリーグのあらゆるところに影響を与えている。その際たる例が、「ステージ制」だろう。1シーズンを2ステージに分け、それぞれのステージ王者が最終決戦を行うというリーグ戦だ。ファンの興を冷まさない、スポンサーを複数組み込むことができる、などのメリットはある。しかし、個人的にはどこか真剣勝負の醍醐味から乖離(かいり)してしまうと感じるステージ制。この制度の導入は、明らかにJリーグの成功に追随したものだった(翌年には、現在のJリーグと同じく、1ステージ制へと変更されている)。

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著者プロフィール

1977年生まれ。日本大学芸術学部卒。IT企業に入社後、モバイルを中心としたサッカービジネスに携わり、日本最大の有料サッカーメディアを作る。サッカージャーナリストとして日本代表および海外サッカークラブの試合を取材しながら世界各地を周った。一方でFCバルセロナ、マンチェスター・ユナイテッド、リバプールといった海外クラブとのビジネスも立ち上げた。アルビレックス新潟シンガポールチェアマン兼CEO。シンガポールサッカー協会理事。アルビレックス新潟バルセロナプレジデント。個人ブログ(http://www.korenaga.ws)、Twitter ID(_kore_)

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