魅力的なSリーグ=アルビレックス新潟シンガポール社長コラム 第2回
しかし、である。彼らがそれらをただ放置しているわけではない。特にシンガポールは、持ち前のオリジナリティー溢れる試みで、自国のサッカーレベルを向上させている。それは、経済を急激に発展させてきた経験と同様に、世界でも類を見ないほどユニークな展開を図っている。
マレーシアリーグから独立し、Sリーグ立ち上げへ
もともと、シンガポール代表チームは1921年よりマレーシアのサッカーリーグに所属していた。国家自体がマレーシアから独立(1965年)してからは、その歴史的背景からか、シンガポール国内で過激とも表現できる異様な盛り上がりを見せていたようだ。ある種、自国のアイデンティティーを確立するために、それが大きな役割を果たしていたことは想像に難くないだろう。現在では、シンガポール人の大半がレベルの高いプレミアリーグを観ていることもあり、自国のリーグについては皮肉を交えながら観ることが多い。それゆえ、サッカーに対しての興味の行き先は決まっている。ひとつはサッカーくじ、そしてもうひとつがナショナルチームである。現在も「好きなチームはどこ?」とシンガポール人に尋ねると「ナショナルチーム」という答えが圧倒的に多い。それは、Jリーグ開幕前の日本の状況と似通っているように感じる。
さて、マレーシアリーグに所属していたシンガポール代表チームだが、1994年に22回目のリーグ優勝を果たしている。しかし翌年、八百長疑惑が噴出し、シンガポールは独自のサッカーリーグを設立する必要に迫られた(マレーシアリーグから締め出された、という説も根強いが……)。それをきっかけに立ち上がったのがSリーグというわけだ。
Jリーグの影響を受け、2ステージ制でスタート
Sリーグ発足の3年前、1993年に立ち上がった日本のJリーグは、Sリーグのあらゆるところに影響を与えている。その際たる例が、「ステージ制」だろう。1シーズンを2ステージに分け、それぞれのステージ王者が最終決戦を行うというリーグ戦だ。ファンの興を冷まさない、スポンサーを複数組み込むことができる、などのメリットはある。しかし、個人的にはどこか真剣勝負の醍醐味から乖離(かいり)してしまうと感じるステージ制。この制度の導入は、明らかにJリーグの成功に追随したものだった(翌年には、現在のJリーグと同じく、1ステージ制へと変更されている)。