完成形をつかんだ勝者=春高バレー総括 男子・東亜が貫録の2連覇 女子は東龍が復活V

胡 多巻

試合でチームを完成させた東龍

チームづくりに試行錯誤しながら大会を戦った東九州龍谷だが、笑顔で大会を締めくくった 【(C)坂本清】

 一方の東龍も県予選の2週間前にエースの長岡望悠(=みゆ、1年・ライト)が手を骨折し、手術をするというアクシデントに見舞われた。
 また相原昇監督は全日本ユースの監督でもあり、ユースのメンバーには東龍からも多く選手を輩出していることでチームが2つに分かれてしまい、なかなか一緒に練習する時間がなかった苦労を語った。
「いかに全員がそろった時にチームを完成させていくのかが難しかった」


 しかしそんな状況ながらも相原監督は長岡が戻ってくる事を想定し、その2つのチームが1つになった時をイメージしながら練習していたと言う。
 そこでの大きな試みが、2月初旬に終わった県予選後に行った、ライトポジションながらトスを上げる事にも長けている松浦寛子(2年)を育成することだった。
 長岡も春高の抽選会が終わった3月初旬に復帰し、直前になってようやくベストメンバーがそろったのだが、普通の練習を始める事ができたのは開幕2週間前で、フルに使うことができなかった。
 実践慣れしきれぬまま突入した今大会では、要所での交代メンバーとして、本来のセッターである栄絵里香(1年)が前衛に来た時に長岡を投入し、松浦をセッターとして起用する形をぶっつけ本番で試しながらチームを作っていったのだった。身長の低い栄は前衛ではブロックに跳んでも狙われる可能性があることを計算した上での松浦の育成だったという訳だ。

東龍、最高の形ができあがった準決勝

準決勝の誠英戦で最高の形ができあがったという東龍。写真はブロックアウトを狙う、東龍の松浦寛子 【(C)坂本清】

 そして4戦目の準決勝の誠英(山口)戦。1セットをデュースの末に取られた後、2セット目以降に最高の形ができあがったのだそうだ。それまでは未完成の形で戦っていたと言うのだから、モチベーションの強さと豊富な経験はやはり大きいのだと実感した。

 決勝戦では短い出場時間ながら70%という驚異の決定率でチームに貢献する事ができた長岡は、試合後の会見で、少々申し訳なそさうに喜びを語った。
「みんなで予選を勝ち抜いてくれたので、みんなと監督に感謝の気持ちでいっぱいです」
 監督をはじめ、ユースに出ていた選手、けがから復帰してきた選手も安心して戻れる雰囲気を、チームメートが作ってくれていた結果なのだろう。

 年々レベルの差が縮まっている全国の舞台。
 今年も多くの印象的なプレーヤーたちがコートを駆け回った。来年こそは代々木のコートにと臨むチーム、代々木での経験を生かして再チャレンジを誓うチーム、そして連覇を狙うチームといろいろなチームがあるだろう。思いはさまざまだと思うが、今年以上に心を熱くしてくれるプレーが見られることを今から楽しみにしたい。

<了>

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著者プロフィール

1973年、東京都出身。フリーカメラマンとしてアマチュアスポーツや、ビーチバレー・バレーボール・ソフトボールの撮影を主に行う。アトランタ五輪以降の夏季五輪に足を運んでいる。

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