熊本の見果てぬ夢 〜ロアッソ熊本の挑戦
新たなるスタート
そして、クラブは新たに「ロアッソ熊本 国獲り宣言」を発表。その中で、日本一温かいスタジアムづくりを提唱し、ロアッソ熊本を通して熊本を徹底的にアピールすることに力を注ぐ。「熊本県民にとっては当たり前でも、外から見たらすごいことはたくさんある。県外からやってきた自分だからこそ分かるものもある。それを徹底的にアピールしていきたい」(同)。それが熊本県民が地域の良さを再認識することにつながれば、ロアッソ熊本の存在意義はさらに大きなものになる。
もちろん、チーム強化が最大の目標であることは言うまでもない。クラブは中期目標として5年以内でのJ1昇格を挙げ、そのために育成強化と普及活動の拡大、そして支援体制の充実を図る。当初の夢は実現した。「元気の源」もできた。しかし、これがゴールではない。さらなる大きな夢の実現に向かってチャレンジし、それを手に入れること。それが熊本にとっての本当の夢の実現につながる。ロアッソ熊本は、その先にあるゴールに向かって新たなスタートを切る。
物語は始まったばかり
運営面でも課題は多い。今シーズンは約4億円の予算確保を目指すが、それでもJ2平均の半分にしか過ぎず、クラブハウスと専用練習場も依然としてない。昨年の平均入場者数は約3000人で、Jリーグ昇格効果を見込んでも、今シーズンの目標である平均5000人達成は簡単ではないだろう。加えて、ただひたすら前に向かって走り続けるしかなかったクラブは、その過程でほかにも多くの解決すべき問題を抱えた。「課題はたくさんある。そのひとつ、ひとつをクリアにしていかなければいけない」と、上保事業・運営本部長も口にする。
しかし、それらをネガティブにとらえる必要はないだろう。ゼロからスタートしたクラブがたどり着いたJリーグ昇格はゴールではなく、プロサッカークラブとしてのスタートライン。これから始まる長いレースを走り抜けるためのステップととらえたい。ブレイズ熊本から始まった熊本サッカー関係者の見果てぬ夢は、その序章を終えたに過ぎない。ロアッソ熊本の物語はまだ始まったばかりだ。
<了>