アビスパ福岡は変われるか=新たな決意で臨む2008年シーズン
衝撃とともに始まったチーム改革
ここまで大きな改革に踏み切らざるを得なくなった原因は、2002年のJ2降格以降、多くの選手を長年抱え続けてきたことでチーム内の競争意識が欠け、それが危機感の喪失を招き、チームの水が濁ってしまったからだった。育成型クラブを目指すとしながらも、効果的な育成手法を持たないままに過ごした結果でもあった。また、中盤に好選手を多数抱えていた反面、FWとDFの戦力が足りないなど、チーム編成もアンバランスになっていた。
J1復帰という目標を果たせなかった以上、大幅な改革があることは予想されていたが、問題点を一気に解消しようとする手法に多くのサポーターは反発した。「ここまで築き上げてきた財産を壊してしまうのか」。「昇格を果たせなかった責任のすべてを選手に負わせるのか」。それも、もっともな意見だった。クラブの決定に理解を示したサポーターも戸惑いは隠せなかった。
すべての人たちに共通していたのは、放出した選手以上の質の高さを持った選手を獲得できるのかどうか、という不安。過去を振り返れば、福岡は必ずしも補強が得意なクラブではない。クラブは25、6名でチームを編成するとしていたが、常に資金不足を口にするクラブが10人近くの質の高い選手を獲得できるのか? という疑問を、サポーターが抱くのも当然のことだった。
改革の第一歩は順調なスタート
また、チーム内の活性化を図るため、各ポジションに同レベルの選手をそろえるという狙いも果たされていた。布部陽功、久藤清一、城後寿、タレイ、そしてU−19日本代表の鈴木惇がいるボランチは、誰が出ても全く遜色のない層の厚さ。吉田とGKのポジションを争う神山竜一は、昨シーズン全試合にフル出場を果たしている。そのほかのポジションも、誰がレギュラーになってもおかしくない顔ぶれが並ぶ。
スタッフも大きく変わっていた。コーチ陣で引き続きチームに残ったのはクルークコーチだけ。オーストラリア代表のフィジカルコーチの経験があり、シドニーFC時代にリトバルスキー監督とともに仕事をしたクレアフィジカルコーチをはじめ、篠田善之コーチ、藤川孝幸GKコーチ、藤野英明コンディショニングコーチが加わった。昨シーズンは、監督とコーチ陣の間に壁のようなものが感じられたが、リトバルスキー監督自らが信頼するコーチをそろえたことで、その壁は取り払われた。
こうしたチーム編成に手腕を発揮したのは、クラブ改革の重責を託されてGM・チーム統括部長の職に就いた田部和良氏。リトバルスキー監督とは横浜FCでともに仕事をした旧知の仲だが、その仕事ぶりは、多くのサポーターが感じていた不安を期待に変えた。改革の第一歩は順調にスタートを切ったと言えるだろう。