蛯名も「ビックリ!」 大穴マツリダゴッホが激走V=有馬記念

スポーツナビ

ウオッカ11着惨敗、四位「勝負に行ったが……」

ファン投票1位で3番人気に支持されたウオッカだったが、11着に敗れた 【スポーツナビ】

 一方、64年ぶりの牝馬ダービー馬となり、史上初となる3歳牝馬でのファン投票1位に選ばれたウオッカは、直線での伸びを欠いて11着に敗れた。

 距離ロスがあり、また折り合いに不安のあるウオッカだけに、戦前から不利と言われていた大外16番発走。四位もこの不利を覆すべく、「今日は外枠だったから、折り合いに心配はあったんですけど勝負に行きました。オーナーサイドともレース前に話して、勝負にいくつもりで乗りました」と、ジャパンカップのように最後方から折り合いに専念する騎乗ではなく、積極的に自ら中団ポジションを取りに行った。
「中団の後ろから、いつもより流していく感じで乗った」と四位。その分だけ行きたがってしまった、と道中のウオッカの雰囲気を振り返ったが、それでも手応え十分に3コーナーを通過。だが、さあ、ここから勝負という4コーナーでは途端に手応えがなくなっていた。
「3コーナーまではイメージ通りだったんですけどね。4コーナーでキネーンにぶつけられたのもあったんですけど、それは関係ないと思う。手応え的にもう苦しかった。全体的にタフなレースでしたね。ちょっと分からない部分もあるけど、今回はタフなレースでした」

 64年ぶりという歴史の扉を豪脚でブチ破った歓喜のダービーから7カ月。今度は47年ぶりとなる3歳牝馬による有馬記念制覇を狙ったが、結果は出なかった。また、フランス凱旋門賞の回避、エリザベス女王杯の当日取り消しなど、この秋はアクシデントに泣かされ続け、同世代のライバル・ダイワスカーレットにも直接対決で勝ち越されたまま終わってしまった。
 だが、それでダービー勝利の価値が落ちるわけでもなく、ファン投票1位からも分かるように期待の大きな馬だ。
「せっかくファン投票1位に選んでもらったのに申し訳ないです。ただ、攻めるレースをしての結果だったし、来年に向けて期待するしかないですね」
 2008年シーズンでの逆襲を誓った四位。もちろん、ウオッカ自身も秋の悔しさを糧に、もう一回りも二回りも成長してターフに帰ってくるに違いない。

武豊「スピードが乗らなくて」、サムソン見せ場なく8着

1番人気に支持された武豊騎乗のメイショウサムソンだったが、見せ場なく8着に敗戦 【スポーツナビ】

 堅実な走りを見せてきた今シーズンの姿からは、とても信じられないような結果だった。武豊が懸命に押しても押しても反応がない、前へと進まない。そのまま伸びることなく、メイショウサムソンは8着になだれ込むのが精一杯だった。

 「スタート自体は悪くなかったんですけど、その後がスピードに乗らなくて……。それで外から前に入られてしまって、位置取りが厳しくなりましたね」
 武豊がサバサバした表情でレースを振り返った。スタート直後からダッシュが鈍く、最初のコーナーに入る時には中団よりも後ろの位置。「最初のコーナーまでがちょっと予想外でしたね。それこそ勝った馬ぐらいのポジションに行きたかったんですが」。そこから外へと出して3〜4コーナーで上がっていったが、やはりいつもの伸び脚はなし。見せ場らしい見せ場すら作ることもできなかった。
 「同じ1枠だった天皇賞はものすごいダッシュだったんですけど……。肩ムチを入れてジワジワと詰めてスピードを乗せていったんですが、乗り切らなかった。残念ですね。今日は落ち着いていて、いいかなと思ったんですけど、難しいですね」

 能力を出し切れることなく、最後の大一番を終えることになったメイショウサムソン。春からの激戦、一度は目指した凱旋門賞、それを回避する原因となったインフルエンザの感染、そして死力を尽くした秋GI2戦と、休みなく1年を走ってきた目に見えない疲れがここに来て出てしまったのかもしれない。
 「1年の最後を締めくくるためにも勝たせてあげたかった。でも、この1年よく走ってくれましたし、また来年、頑張ります」
 この秋からコンビを組むことになった相棒をねぎらった武豊。思えば、今年はダービー馬として出直しのスタートだった。今度は日本最強の座を取り戻すために、来春、また出直しのシーズンに全力を尽くす。

ダイワスカーレット惜敗2着、アンカツも来年に手応え

2着に敗れたものの、来年に期待を持たせる好走をみせたダイワスカーレットと安藤勝己 【スポーツナビ】

 2着に粘った3歳牝馬ダイワスカーレット。1馬身4分の1差及ばなかったが、改めて今年の3歳牝馬のレベルの高さを証明する好走だった。

 チョウサンにハナこそ譲ったものの、好位2番手を追走。ペースも速くなく、ここまでの秋3戦同様にダイワスカーレットには絶好の展開に思えた。
 「典ちゃん(横山典)が来るのは分かっていたし、どうしようかなって思ったけど、抑えてあの位置に」と安藤勝。初めての古馬牡馬相手、さらに初めての長距離レースということを考慮し、気分良く行かせ過ぎずに2番手で我慢させたわけだが、「抑えた分だけ引っ掛かってしまった。ハミを噛んで、だいぶ行きたがっていた」と、完ぺきに折り合うことができなかった。

 これまでの牝馬同士のレースなら、それでも押し切れたかもしれない。だが、現実に0秒2差届かなかったのが、一線級古馬の壁ということか。しかし、名手アンカツの表情に悲観の色はない。
 「それでも大きく負けていないですからね。やっぱり能力あるってことが分かっただけでもいいのかなと思うし、距離も何とかなるってのが分かりましたから」
 トップ牡馬との力差がないことを証明し、また、初めての長距離輸送や距離も克服しての2着は胸を張っていい。着差がわずかだけに悔しい敗戦には変わりないが、2008年シーズンがより楽しみになる“期待の2着”とも言えるだろう。

ダイワメジャー悔いなし3着、引退式で上原師は号泣

GI5勝のダイワメジャーは引退レースでも3着と好走、レース後の引退式では多くのファンが別れを惜しんだ 【スポーツナビ】

 その妹には及ばなかったが、これが引退レースとなるGI5勝馬のダイワメジャーは昨年と同じ3着。有終の美を飾ることこそできなかったものの、3〜4コーナーではインを巧みに突いて見せ場を十分に作った。レース後には引退式が行われ、多くのファンが最後の雄姿に声援を送っていた。

 勝負どころ3〜4コーナーのインに突っ込んでポジションをジャンプアップさせたデムーロの好判断。と、同時に沸き起こった歓声。勢い・脚色とも十分に先頭に並びかけたが、最後は力尽きて3着に敗れた。
 「出来が良かったし、引退レースだったから最後は勝ちたかったけどね。3着という結果はうれしい反面、悔しい」と、ちょっぴり悔しさをにじませた表情のデムーロ。だが、ダイワメジャー自身にとっては、能力を出し切った悔いのない最後のレースだっただろう。

 レース後には引退式が行われ、皐月賞を勝って初GIタイトルをダイワメジャーにもたらしたデムーロ、昨年の5歳春からコンビを組んでGI4勝を挙げた安藤勝己、上原博之調教師、大城敬三オーナーがファンへ向けて挨拶を行った。
 「皐月賞は今でも思い出すレース。今日、また騎乗することができてうれしかったけど、3着でゴメンナサイ」とデムーロ。一方の主戦・アンカツは「自分が乗せてもらった時は、メジャーの一番いい時期で、自分には何の苦労もなかった。本当に感謝ですね」と振り返ると、「一生忘れらない馬。引退式でまたがって、寂しい気持ちになりました。でも、子供たちはいいところばかり受け継ぐと思いますし、メジャーの子供にも乗ってみたいですね」と2世のデビューを心待ちにしていた。

 また、ダイワメジャーがスランプに陥った原因である喘鳴症を克服するために、手術やその後のケアなど人馬一体となった苦労をともにしてきた上原調教師は「今、デビューからのことを色々と思い出して、言葉が出なくなりました」と、感極まって号泣。「本当に感謝しています。メジャーにはたくさんの勉強をさせてもらった」と、同馬を通して得た経験を生かして、さらなる強い馬づくりに励むことを誓った。

 ダイワメジャーは父サンデーサイレンス、母スカーレットブーケ(母の父ノーザンテースト)の血統。3歳春に牡馬クラシック三冠レースの第1冠目・皐月賞を制覇し、早くから素質を開花。だが、その後、数多くの名馬が引退に追い込まれたノドの病気である喘鳴症を悪化させてスランプに陥ってしまった。復活をかけて3歳秋に手術に踏み切ると、これが成功。上原調教師はじめ厩舎スタッフの細心のケアにより、天皇賞・秋、安田記念、マイルチャンピオンシップ連覇など、日本を代表する名マイラーとして君臨した。
 通算成績(地方・海外は含まず)は27戦9勝。総獲得賞金は10億を突破し、10億223万円。これはメジロマックイーンに次いで歴代8位である。
 今後はいったん美浦トレーニングセンターへと戻り、26日に北海道へと出発。来年からは社台スタリオンステーションで種牡馬となり、4年後に2世がデビューする。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント