蛯名も「ビックリ!」 大穴マツリダゴッホが激走V=有馬記念

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1年の総決算・有馬記念でアッと驚く勝利を上げ、記念撮影で笑顔を見せる蛯名騎手らマツリダゴッホ陣営 【スポーツナビ】

 JRA(日本中央競馬会)の1年を締めくくる総決算のグランプリレース、第52回GI有馬記念(2500メートル芝)が23日、千葉・中山競馬場で開催され、9番人気のマツリダゴッホ(牡4=国枝厩舎)が早めスパートから押し切って優勝。単勝52.3倍の穴馬によるアッと驚く快勝劇に、11万人を超えるファンが詰め掛けた中山競馬場は騒然となった。3連単は80万880円の高配当で、3連複の7万3320円とともに、有馬記念史上最高の払戻金となった。騎乗した蛯名正義は2001年マンハッタンカフェ以来となる有馬記念2勝目、管理する国枝栄調教師はうれしい初勝利となった。
 1馬身4分の1差の2着には安藤勝己騎乗のダイワスカーレット(牝3=松田国厩舎)。これが引退レースとなるダイワメジャー(牡6=上原厩舎)が3着に入線した。一方、武豊騎乗の1番人気メイショウサムソン(牡4=高橋成厩舎)は8着、ファン投票1位で3番人気だったウオッカ(牝3=角居厩舎)は11着と、それぞれ惨敗に終わった。

KY勝利? いや、状態の良さには自信を持っていた蛯名

まさかのマツリダゴッホ大激走V、ゴール後に蛯名は歓喜のガッツポーズ! 【スポーツナビ】

 殊勲のグランプリVに導いた蛯名でさえ、信じられない驚きの勝利だった。
 「いやぁ、ビックリですね。みんながアッと言ったというよりも、僕がアッと言っちゃいましたから。まさかと思いました。ゴールした後、ファンの方からは『KY!』って言われてしまいましたからね(笑)」
 冗談交じりに大きな笑顔を浮かべながら勝利の感想を語った蛯名。しかし、まったく勝負にならないと思っていたわけではもちろん、ない。この秋から美浦トレーニングセンターに新たに導入されたポリトラック馬場での最終追い切りでは、豪快な伸び脚を披露。「抜群の動きでしたからね。前走の天皇賞とはまるで違うと思っていましたし、状態だけには自信がありました」と、蛯名は密かに手応えを感じていたのだ。

 ただ、今回は相手が相手だけに強気なコメントを言えなかったものの、レースでは好スタートから先行3番手の絶好位を確保。「誰も行かなかったら逃げるくらいのつもりでいました。典ちゃん(横山典)が行ってくれたんで、抑えて行ったんですけど、それでもだいぶ行きたがりましたね」と道中は引っ掛かるくらいの勢いで、スローペースの中をダイワスカーレットをぴったりマークするように追走していく。

これがSS産駒の成長力、08年はさらなる飛躍を期待

人気こそ低かったものの、最終追い切りでは抜群の動きを見せ、状態の良さには陣営が自信を持っていた 【スポーツナビ】

 そしてペースが上がった3コーナー過ぎから積極的に逃げたチョウサン、2番手のダイワスカーレットとの差を詰めていくと、直線入り口では前の2頭をかわして一気に先頭に踊り出た。
 「最後まで内を通りたかったですからね。安藤さんが内に来る前に自分の馬をそこへ出したかった」

 この蛯名の積極騎乗がズバリとハマり、ダイワスカーレットを出し抜くだけではなく、メイショウサムソン、ウオッカら怖い後続勢ともセーフティリードをキープ。そのまま、最後の直線では影も踏ませず先頭でゴールに飛び込んだ。蛯名が歓喜の瞬間をこう振り返る。
 「直線は長かったですね。スカーレットが離れていないというのは分かっていましたし、何かに差されるんじゃないかと思ってた。でも、『勝っちゃったよ。ビックリ』というのが正直な感想でしたね(笑)」

蛯名(右)、同馬を管理する国枝調教師は表彰式後にガッチリ握手 【スポーツナビ】

 グランプリという大舞台でアッと言わせることに成功し、笑いが止まらない国枝調教師もやはり、この激走の要因に「追い切りは元気いっぱいでしたし、いい状態だなと思っていました」と、出来の良さを挙げる。
 また、マツリダゴッホは早世した大種牡馬サンデーサイレンスの最後の世代。「サンデー産駒らしく、成長力がすごいということですね。力強さに欠けるところもあったんですけど、秋になってどんどん良くなっていきましたから」と、SS産駒特有の成長力も大きな勝因に挙げた。

 そして、忘れてならないのがマツリダゴッホと中山競馬場との相性。今年制したGII2勝はいずれも中山コース。通算でも7戦して4勝2着1回3着1回(残り1戦は競走中止)と、群を抜く好成績だ。この中山との相性含め、改めて勝因を問われた蛯名がこう語る。
 「中山だと本当に手応え通りに最後まで走ってくれる。それに、今日はスムーズに走れたのが一番。内枠も良かったですし、今日の馬場状態ぐらいが一番走りやすかったのかもしれないですね」
 馬の状態、コース、馬場状態、枠順、展開、そして騎手の腕と、すべてが100パーセントにかみ合ったからこそつかんだ大きな勝利であろう。

 また、デビュー戦からマツリダゴッホの手綱をとってきた蛯名だったが、昨年のセントライト記念では落馬競走中止。この一戦を機に主戦を交替となるなど、辛い時期も味わった。今年9月のオールカマー(1着)でコンビが復活し、この大一番での大勝利。
 「この馬とのコンビでは色々とあったし、また乗せてくれた関係者の方々にこれで一つ返せたかなと思います」と、蛯名はグッと言葉に力を込めた。

 有馬のタイトルを得たことで、東の総大将として、そして日本を代表するトップホースとしてさらなる成長と飛躍が期待される2008年。来春はグランプリホースの看板を引っさげ、同世代のライバル・メイショウサムソンらを相手に伝統の天皇賞・春に挑むことになる。

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