武豊キタサン悪夢「全部勝つのは難しい」 ミルコ昨年の分までサトノクラウン一撃V

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テンションの高さが逆に良かった

大外から一気の末脚が炸裂! 大阪杯と比べて出来が格段に良くなっていた 【スポーツナビ】

 一方、穴党を歓喜させた殊勲の一撃を放ったのが、関東からの刺客・サトノクラウンだった。ミルコ&堀厩舎のコンビと宝塚記念と言えば、昨年2着に敗れた上にレース後の故障が影響して引退したドゥラメンテが思い出される。いわば“リベンジ”の一戦を見事に成功させたというわけだ。

「超うれしいですね! 去年はドゥラメンテのことがあって悲しかったけど、今年は本当に良かったです」

 ストレートに喜びを表現したミルコ。今回と同じ3番人気の支持を集めながら6着に敗れた前走大阪杯と比較して、明らかに違った点と言えば、パドックでのテンションの高さ。大阪杯はおとなしいぐらいに落ち着いており、この宝塚記念はちょっと不安になるぐらい高かったのだと、ミルコは言う。普通ならば落ち着いている方が良いに決まっているのだが、サトノクラウンにはどうやらこの“普通”が当てはまらないらしい。

「いつもテンションが高い馬ですけど、大阪杯はすごくおとなしかったし落ち着きすぎていました。大人になったのかな?と思っていたんですけど、直線は伸びなかったですからね。今回は逆にテンションが高くても返し馬では落ち着いていましたし、すごく良い感じでした。レースでも走りましたし、今思うとそれで良かったのかなと思います」

 つまり、サトノクラウンのパドックでのテンションの高さは元気のバロメーターでもある。それを裏付けるように、堀調教師も勝因の一番のポイントに「状態の良さ」を真っ先に挙げていた。そして、もう1つ、大きな勝因として挙げたのが、レース中の向こう正面での攻防とミルコの判断だ。

勝負の鍵は向こう正面のペースアップ

ミルコの向こう正面の好判断が勝利を引き寄せた 【スポーツナビ】

 このレース、前半の1000m通過が60秒6。パンパンの良馬場ではなかったとはいえ、GIに出走してくるようなメンバーであることを考えると決して速いペースではない。ミルコはむしろ流れが遅いと感じていた。

「ずっとキタサンブラックを見ながら、いい手応えで進んでいたんですが、ペースが遅かったです。もともと阪神の2200メートルの内回りはサトノクラウンには不安だと思っていましたし、自分のペースが決まらないのは良くない。だから僕が向こう正面でペースを上げて行ったときに、ユタカさんも行ってくれたからちょうど良いペースになりました」

 あえてキタサンブラックにプレッシャーをかけにいったわけではない、あくまで自分のペースが大事と振り返ったミルコだったが、結果的にレースはサトノクラウン向きの流れに動かされることになった――いわば、向こう正面の時点から、このレースの支配者はすでにミルコとサトノクラウンだったとも言えるだろう。

 そしてペースだけでなく、「キタサンブラックの後ろだったから、僕が一番良いところを行けた」と言うように、馬場状態の良い外めを悠々と追走できた分、自慢の末脚も溜まりに溜まっている。

「すごく良い手応え。4コーナーではもう何でもできる気持ちでした(笑)。キタサンブラックが伸びなかったのは悲しかったけど、サトノクラウンは馬なりで先頭に立つことができましたし、ほかの馬は全く気にならなかったです。さすがGI馬ですね」

秋は国内専念か、それとも海外遠征か

秋は国内か海外か、その選択肢に注目だ(右から2人目が堀調教師) 【スポーツナビ】

 これで香港の国際GIレースに続き、国内グランプリ制覇。実績的には同じオーナーのサトノダイヤモンドに並ぶ存在……いや、6月2日のコロネーションC、21日のプリンスオブウェールズSと欧州の主要GIを連勝しているハイランドリールを撃破している実績を加味すれば、海外ホースマンにとってはサトノダイヤモンドよりも上の存在と見られているかもしれない。秋の目標に関して、堀調教師はこう話している。

「秋については、毎回同じ答えになってしまい申し訳ありませんが、馬の状態を見て、オーナーと相談しながら決めていきたいと思います。サトノダイヤモンドが海外遠征をするので、この馬は国内専念ということで春の時点では話をしていましたが、ここを勝ったことで色んな選択肢が出てきたと思います」

 一方のミルコは、昨年ドゥラメンテといっしょに思い描いた夢の分も込めて、ハッキリとこんな“お願い”をした。

「凱旋門賞に行きたいです!」

 欧州血統と道悪を苦にしないパワーを考えれば、ミルコが強く推すようにサトノクラウンも凱旋門賞に参戦すれば面白い存在になってくるに違いない。当初の予定通り海外はサトノダイヤモンドに任せてこちらは国内専念か、それともフランス・シャンティイの地に並び立つのか、はたまた海外は海外でも例えば米ブリーダーズカップ・ターフなど別の大陸を目指すのか――サトノ第二の矢はこの秋どこに狙いを定めて放たれるのか、競馬ファンにとってまた1つ、大きな楽しみが増えた。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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