ニューイヤーで主役の座を奪った市田孝 積み上げた自信を胸に東京マラソンへ
しかし、その本番で主役の座を奪ったのは、社会人2年目の市田孝(旭化成)だった。
エースがそろう区間で区間賞の走り
各チームのエースが集う4区で主役の座を奪ったのは旭化成の市田孝(右)だった 【写真は共同】
最初の5キロを14分ちょうどのペースで入り、最初から突っ込んだ服部や5位から追い上げたHondaの設楽悠太には少し離される展開になった。
だが落ち着いた走りをする市田は4.5キロで日清食品グループの村澤明伸やトヨタ自動車九州の今井正人、MHPSの井上大仁が形成していた6位グループに追いつくとすかさず前に出た。
そして10キロ手前では4位集団から落ちてきた神野に追いつくと、前で引っ張りながら13.8キロで落ちてきた設楽を抜いた。その後は「神野君が後ろに付いているのは分かったので、それでペースをもっと上げなければいけないという気持ちになれたので、いい刺激になりました。彼を引き離した時は意識的にペースを上げたというより、自分のペースが遅いと感じていたので、見えてきた前を追うために自然とペースが上がっていたのだと思います」というように、16キロ過ぎには神野を突き放した。
15キロ過ぎからは腹痛も出てきた影響もあり、ラスト3キロを切って向かい風になってからは一度抜いた井上と今井に追いつかれ、井上には少し先に行かれた。だがそこから今井との激しいデッドヒートを繰り広げ、結果的に3秒負けたが5位で中継した。
それでも1位のDeNAとは17秒差に詰め、2位のトヨタ自動車とは13秒、3位のMHPSとは6秒差という位置で5区の村山謙太につないで、逆転優勝への道を切り開いたのだ。
個人でも今井と競い合った最後の粘りが効き、今井に1秒差の1時間03分06秒で区間賞を獲得。
「レース展開は走り出してから決めようと思っていたが、あまり突っ込み過ぎないようにと思っていました。最初の5キロは14分ちょっとで行って、10キロは28分15秒くらい。その後が14分半くらいになったので、それをこのまま落とさずにと思って走っていました。自分で決めていたペースと同じくらいで走れましたが、終わってみると1時間3分かかっていたのでまだまだいけるところはあったのではないかと思います」
チームが優勝するためには区間賞獲得が最低条件だと思っていたという市田は、設楽悠太が持っている1時間02分45秒の区間賞更新を狙っていたと悔しがった。
エントリーから外れた悔しさで奮起
昨年の日本クロスカントリー選手権を優勝。その後も自信をつけていった 【写真は共同】
その切っ掛けが昨年の全日本実業団駅伝で、エントリーメンバーに入りながらも走れなかったことだ。
「弟の宏もメンバーから外れたので、悔しさも倍になったというか……。どちらかひとりでも走っていれば、応援してくれている中学や高校の恩師たちにもテレビで見てもらえるが、それができなかったのが悔しかったので。だから次に弟と一緒に選ばれるためには、1年間安定して結果を出すのが大事だなと思って取り組みました」
その自信の礎となったのは、2月の日本クロスカントリー選手権で神野やチームメートの茂木圭次郎を破って優勝したことだ。その後は6月の日本選手権でも1万メートル4位、5000メートル6位と安定した結果を出し、7月のホクレンディスタンスチャレンジ網走大会の1万メートルでは、27分53秒59まで記録を伸ばした。