９月２２日に開幕を迎える男子プロバスケットボールの新リーグ「Ｂリーグ」。Ｂ１に所属する１８クラブをカウントダウン方式で紹介していく。第１３回はＢ１西地区のシーホース三河だ。

　ナショナル・バスケットボール・リーグ（ＮＢＬ）最終シーズンをチャンピオンとして終えるはずだったシーホース三河。レギュラーシーズンの成績は４位ながら、それはある意味計算通りだった。勝負はプレーオフから、という戦い方ができる「大人のチーム」だからだ。ファイナルでは東芝ブレイブサンダース神奈川（現川崎ブレイブサンダース）に敗れ、準優勝に終わったものの、「最後はやっぱり三河じゃないか」という声が多く聞かれるなど下馬評が高いチームだった。

　チームの要は日本代表の比江島慎。バスケットセンスはリーグ屈指で、日本代表ではポイントガードも務めている。三河ではオールラウンダーであり、得点力が期待される。自分より背の高い外国籍選手が立ちはだかるインサイドへ果敢に切れ込み、くるりと身をひるがえしてシュートまで持っていく「比江島ターン」はつとに有名だ。ゴールが見えないのではないかと思えるほどの長い手が伸びてきても、見事なステップワークでフィニッシュしてしまう。

　三河にはもう１人、欠かせない選手がいる。それがチームのポイントゲッターであり、日本を代表するシューター、金丸晃輔だ。当時日本バスケットボール協会（ＪＢＡ）会長を務めていた川淵三郎氏は、昨年５月のＮＢＬファイナルの観戦に訪れた際「彼のような選手がいるんだから、男子も頑張ってほしい。カッコいい選手だよ」と、高い確率で次々とシュートを決める金丸の活躍に惚れ込んでいた。

　能力のある選手たちを擁する三河で指揮を執る、鈴木貴美一ヘッドコーチの手堅い采配は今シーズンも万全だろう。間違いなく、優勝候補の一角を占めるチームだ。

　日本でスポーツが発展してきた理由の１つに「企業スポーツ」という概念がある。従業員としてアスリートを受け入れてサポートし、好成績を上げればそれが社員の士気高揚につながる。その意味では、シーホース三河も企業スポーツとして力をつけてきたチームだ。優勝回数を見てもその成績は申し分なく、十分に求められる役割を果たしてきた。今度はＢリーグで「プロ」のクラブとして、企業の枠に捉われず、地元地域との連携を深めながら活動を行っていく。

　三河がホームタウンとする刈谷市をはじめ、愛知県にホームタウンを置くＢリーグのクラブはＢ１の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、三遠ネオフェニックス（三遠は静岡、長野の一部を含む）、Ｂ２の豊通ファイティングイーグルス名古屋の４つだ。他にも女子のトップリーグであるＷＪＢＬにも、トヨタ自動車アンテロープス、デンソーアイリス、三菱電機コアラーズ、トヨタ紡織サンシャインラビッツと４つのチームがあり、愛知はまさに「バスケット県」だ。

　そんなＢ１で行われる三つどもえダービーマッチは見物だろう。ブースターが一番に駆け付けるのはウィングアリーナ刈谷だったとしても、それ以外にいくつものアリーナをはしごするのも面白いかもしれない。それぞれクラブ独自の応援風景があり、ご当地のグルメにもめぐり合えそうだ。

　先に紹介した２人以外にもタレントがそろうクラブにあって、ひそかに大記録に挑む選手がいる。それは４２歳の高橋マイケルだ。１９９５年にいすゞ自動車で鮮烈デビューを果たすと、チームは優勝し、自身も新人王とベスト５を受賞した。いすゞ自動車では４連覇を含む計５度の優勝を経験し、新潟アルビレックスを経てトヨタ自動車アルバルクへ移籍。そこでは３度の優勝を果たし、次は三河へ。２０１４−１５シーズンの優勝で、自身９度目のトップリーグ制覇を達成した。

　若いころはダンクシュートを連発する派手なプレースタイル（フリースローは苦手としていた）だったが、キャリアを積むほどにアウトサイドシュートも安定感が増した。日本国籍を有し、そのルーツが福島県にあるマイケルは、Ｂリーグが始まる今シーズンも、まだまだ元気なプレーを披露してくれそうだ。プレータイムは減ったものの、外国籍選手にとっては良い兄貴分であり、チームに欠かせない存在としてあり続けるマイケル。国内最高峰のＢリーグで１０度目の栄冠を目指す。

（グラフィックデザイン：相河俊介）

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