補強期間終了!近年の傾向を考える 増える低リスクな「育成」の支配下登録
全体としては増加傾向
【ベースボール・タイムズ】
その内訳を見ると、年ごとの増減はあるが、シーズン途中の「トレード」の数は全体を見ると横ばい、もしくは減少傾向にある。その代わりに「新外国人」の数が増加し、さらに05年オフに育成制度が導入されて以降は、「育成」がシーズン途中補強の大きな役割を担うようになってきている。
今年の開幕後を見ても、「トレード」は藤岡好明(北海道日本ハム→横浜DeNA)、大累進(巨人→日本ハム)、乾真大(日本ハム→巨人)、近藤一樹(オリックス→東京ヤクルト)、八木亮祐(ヤクルト→オリックス)の5人のみ。
一方、「新外国人」は開幕直後の4月に加入したザガースキー(DeNA)に始まり、締め切り最終月の7月にはデラバー(広島)、ペレス、ペゲーロ(東北楽天)、ウルフ(埼玉西武)、ブロードウェイ(DeNA)と次々と来日し、計14人が加わった。さらにそれを上回ったのが「育成」だ。オールスターにも選ばれた原口文仁(阪神)や5年ぶりの白星を挙げた由規(ヤクルト)ら計18人が、シーズン途中から背番号を変えて再出発を図っている。
トレード件数は横ばい
【ベースボール・タイムズ】
過去を振り返ると、92年5月にトレードとなった大久保博元(西武→巨人)が、移籍直後から正捕手として本塁打を量産し、打てば負けない「デーブ神話」もできあがった。12年6月に移籍した藤田一也(DeNA→楽天)も、その年にレギュラーを確保すると翌年にはリーグ優勝、日本一に大きく貢献。15年6月に移籍した矢野謙次(巨人→日本ハム)は移籍後初試合で猛打賞をマークしてお立ち台に上り、今季も代打の切り札として存在感を見せている。
しかし、全体の数からするとトレードを経ての“成功者”は多くない。前提として日本人がトレードに対してネガティブな印象を持っていることがあるが、それと同時に近年は12球団の均一化も理由にあるだろう。かつては首脳陣との確執を理由に放出される選手が移籍後に「うっぷん晴らし」する場合や、指導法なども含めた球団間の環境の違いが、「変身」につながったことも多かったが、近年は優等生タイプの選手が増え、情報社会の中で球団間の格差が少なくなったことで、トレードの有効性は低くなってきている。
増加しつつある新外国人
【ベースボール・タイムズ】
途中加入で活躍した近年の外国人を挙げると、まずは14年5月に加入したメヒア(西武)だろう。加入後の初打席初本塁打からアーチを量産し、シーズン途中入団では史上初となる本塁打王に輝いた。その他、10年4月に加入して2ケタ11勝をマークしたスタンリッジ(阪神、現千葉ロッテ)、同じく10年6月末の加入から15本塁打を放ったホワイトセル(ヤクルト)。13年のキラ(広島)、14年のヒース(広島)はともにCS進出に貢献し、現在主砲として活躍中のエルドレッド(広島)も12年の来日だった。
だが、こちらもトレード同様に成功率は低いと言わざるを得ない。シーズン途中となると、言葉は悪いが基本的にメジャー昇格を果たせなかった“残り物”の選手の中から選ぶ形となり、その中から“掘り出し物”を探り当てるのは至難の業だ。
育成の支配下登録が主流に
【ベースボール・タイムズ】
最初の成功者は、07年4月に育成契約から支配下登録された山口鉄也(巨人)だった。その山口の活躍もあり、その後も11年7月の国吉佑樹(DeNA)、12年4月の千賀滉大(福岡ソフトバンク)、同年7月の二保旭(ソフトバンク)、14年5月の飯田優也(ソフトバンク)、15年6月の砂田毅樹(DeNA)らが、次々とシーズン途中の支配下登録から1軍でのひのき舞台に立った。
そして今年は、先にも挙げたように、原口、由規を筆頭に計18名がシーズン途中に支配下登録された。育成制度については、様々な問題点が指摘されているが、この制度がなければ由規の復活勝利も実現しなかったかもしれず、その存在価値は否定できない。その上で、「トレード」や「新外国人」に比べて球団が抱えるリスクが限りなく低いことが、近年の人数増加に大きく影響しているだろう。
もちろん、“育った”ということも理由にあるが、それ以上にチームの弱点を埋める“補強”という側面が強くなってきた「育成」。その在り方は、今後も議論の対象となるだろう。
(文・三和直樹、グラフィックデザイン・山崎理美)
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