ユーロ2016の出場国拡大に賛否両論 各国記者が分析するグループステージ
16カ国から24カ国に出場枠が拡大
強豪国が順当にベスト16入りした一方で、初出場のアイスランド(写真)、44年ぶりに出場したハンガリーなど伏兵が大躍進 【写真:ロイター/アフロ】
そんな今回のユーロで、1つの大きな変化があったことを忘れてはならない。出場国が1996年のイングランド大会から12年ポーランド・ウクライナ共催大会までの16カ国から、24カ国に増えたのだ。これは08年9月のUEFA(欧州サッカー連盟)理事会で決定した事項。当時のミッシェル・プラティニ会長が枠の拡大を推し進め、賛否両論が渦巻いた。
76年ユーゴスラビア大会からユーロを取材しているイングランドのベテランジャーナリストで、現在は『イブニングスタンダード』に寄稿するパトリック・バークレー記者も「プラティニの決断は正直、バカげていると思った」と本音を吐露する1人だ。
「24カ国が参加して、16カ国が決勝トーナメントに残るとなれば、強豪国とそれ以外の国に実力差が生まれやすい。結果的に大味な試合が増えて、大会のレベルが下がる。そういう懸念は確かにありました」
欧州では彼と同じような意見を持つメディアが大半を占めていた。けれども、実際に大会が始まってみると、波乱含みの展開が続き、大差のつく試合はほとんどなかった。
拮抗した試合が多かったグループステージ
グループステージ3分けに終わったポルトガルは3位通過。出場枠拡大で救われた形となった 【写真:ロイター/アフロ】
そのハンガリーとの直接対決だった22日の最終戦は壮絶な打ち合いになり、ポルトガルは3−3のドローに持ち込んで3位でフィニッシュ。勝ち点と得失点差によって何とか16強入りしたが、「アイスランドがオーストリアに勝ったのを知った時はもうダメかと思った」とクリスティアーノ・ロナウドがため息交じりに語ったほどの追い込まれ方だった。実際、16カ国開催であれば、ポルトガルはグループステージで敗退していた。彼らも出場枠拡大で救われたのだ。
イングランドとウェールズ、スロバキア、ロシアが同居したB組、イタリア、ベルギー、アイルランド、スウェーデンが同居したE組なども想像以上に拮抗(きっこう)した展開になっている。この現象についてはバークレー記者も驚きを禁じ得ないという。
「16カ国出場だと2巡目までに2位以内が決まって、3巡目は消化試合になるケースも少なくなかった。でも今大会は3位の上位4チームまで決勝トーナメントに行けるということで、3巡目まで意味のある試合が続きました。開幕2連敗していたA組のアルバニアやD組のトルコのようなチームでも、3巡目に勝って勝ち点3を挙げれば、16強入りできるかもしれない。そういう前向きな意欲を強く感じられたのは、ポジティブな要素だったと思います」
3位まで上位進出の可能性があるため、小国が希望を持ってグループステージに挑めたと評価する声は他からも聞こえてきた。フランス・ボルドーに本拠を置く『Sud-Ouest(スッドゥ・ウエスト=南西新聞)』のパトリック・ファビエール記者はこう語っている。
「これまでユーロで見たことのなかったアイスランドや北アイルランド、ウェールズ、アルバニアといった国が非常にいい戦いを見せられたのも、24カ国に枠が拡大し、出場チャンスを得たから。本大会に参戦できる喜びと高いモチベーションは選手のみならず、大挙してフランスを訪れたサポーターからも感じられました。グループステージの最後までどこが勝ち上がるか分からないスリリングさを味わえたのも大きかった。ラウンド16を設けたのはすごくいいアイデアだと思います」