レスター・シティが街にかけた魔法 すべてを変えた「奇跡の物語」最終章
街のシンボルとなったレスター・シティ
レスター対ウエストハム戦のキングパワースタジアム。3万2104人の来場者を記録し、この日も超満員となった。なお、今シーズンのホームゲームはすべて完売 【田嶋コウスケ】
火付け役は、プレミアリーグで首位を快走しているレスター・シティ。今季の開幕前に「降格本命」と陰口をたたかれていたスモールクラブが、マンチェスター・シティやトッテナム・ホットスパー、チェルシーらの強豪クラブを次々と撃破。17日に行われたウエストハム・ユナイテッド戦(2−2)でも、試合終了間際に同点に追いつく粘り強さを見せ、優勝が目前に迫っている。「資金を持てる者が制す」と言われて久しいプレミアで、選手の年俸総額がリーグ17位の彼らが頂点に立つのは、まさしく「奇跡の物語」──。そんなおとぎ話のようなストーリーに、人口・約30万人の中都市レスターが熱狂しているのだ。
レスター大学とデ・モントフォート大学という2つの大学があるレスターは、学問の街として知られる(※ちなみに、レスター大学にはFIFA運営の大学院コースが設置。10カ月の間に英国・イタリア・スイスにある3つの大学を回るが、英国ではレスター大学で学ぶ)。さらに、インドやパキスタンといった南インド系の移民が多く、国際色豊かなコミュニティーも併せ持つ。しかし、胸を張って「観光名所」と呼べる場所は少なく、わざわざ足を運ぶツーリストは皆無に等しかった。英紙『デーリー・テレグラフ』のインタビューに答えたデ・モントフォート大学の学生の言葉が、住民の思いを代弁している。
「これまでレスター出身者は、自分たちの故郷に誇りを持てずにいた。だが、今は違う。レスター・シティが、この街のシンボルになった。僕らに誇りをもたらしてくれたんだ。レスター出身であることを、これ以上、誇りに思うことはない」
躍進がもたらした劇的変化
地元紙『レスター・マーキュリー』の見出しは「タイトル・ドリーム」。栄冠に近づいてきた 【田嶋コウスケ】
ところが、今や世界中から注目を浴びる存在になった。15日に行われたクラウディオ・ラニエリ監督の定例会見には、テレビやラジオ、新聞社など総勢60名を超えるジャーナリストが集結し、指揮官の言葉に耳を傾けた。ターナー記者は言う。
「いろいろ劇的に変わりすぎて目が回るよ。私のもとには取材が殺到し、イタリアやドイツ、スイス、北欧といったヨーロッパ各国だけでなく、米国やオーストラリア、ニュージーランドからも依頼が舞い込むようになった。もちろん、今までそんなことはなかった」