東邦・藤嶋が見せた成長の証し=監督公言の「春夏連覇」へまず1勝
桐生一高打線を9回途中まで1安打に抑えた東邦高・藤嶋 【写真は共同】
お立ち台でのテレビのインタビューを、はきはきと締めくくる姿に好感が持てる。相手は、甲子園では初戦5連勝中で、そのうち3回は8強以上に進んでいる関東一高。その実力校を1安打11三振、9回2死からマウンドを松山仁彦に譲ったとはいえ、ほとんど完封に抑えた東邦高・藤嶋健人だ。
「ブルペンで調子のいい球種を見つけて臨むんですが、ブルペンでは高かったカーブが、よく低めに決まってくれました」
バンビ、というにはどうもイメージがそぐわない。2014年夏、1年生ながら甲子園初登板で初勝利を挙げた藤嶋健人は、バンビ2世と呼ばれた。1977年夏、やはり1年生エースとして東邦高を準優勝に導いた大先輩・坂本佳一さんにちなんでのものだ。だが、きゃしゃで手足が長く、ルックスもかわいげだった坂本さんに比べると、藤嶋はもっとドスが利いていた。力投型。打者を打ち取るたびに「よっしゃー!」と雄叫びを上げ、表情にも闘争心をむき出しにする。
ただ、1年半という時間が、藤嶋を大人に成長させたのか。大会前、10日に行われたキャプテントーク。
他校の主将から、「藤嶋君はほえているイメージがあったのに、最近そうじゃなくなったのはなぜ?」 と問われると、こう答えた。
「1年の夏は頑張って投げるしかなく、自分に余裕がなかった。いまも納得いく球やプレーが出れば、テンションが上がってほえるかもしれません(笑)」
エースで4番、主将も務めチームをけん引
実際、この日の藤嶋は余裕があった。カーブ、縦のスライダーでカウントを稼ぎ、ここぞの場面では140キロ前後のストレート。たとえば7回、相手の4番・佐藤佑亮との対戦では112キロのカーブ、121キロの縦スラで簡単に追い込み、最後は140キロのストレートで空振り3球三振だ。1年時はよく帽子を飛ばし、注意を受けるほどの力投型だったが、うまく緩急を使い、ピンチにはギアを上げる。
「試合前、変化球狙いを指示しましたが、真っ直ぐに思いのほか押されてしまった。それが頭にあるので、変化球にもなかなか手が出ませんでした」とは、関東一高・米沢貴光監督だ。
藤嶋は言う。
「1年のときより周りがよく見えてるし、楽しめました。コントロールも成長していると思います」
東邦高・森田泰弘監督も絶賛だ。
「ランナーが出てからの落ち着きは、とにかく次元が違います。1年の夏に甲子園のすばらしさを感じ、“いいところだぞ、すごいぞ、みんなで行こうよ”と先頭に立ち、チームを盛り上げてくれた。できた男なんですよ」
“できた男”だからこそ、エースで4番の重責に加えて主将を任せることにも、なんの躊躇もなかったという。
“春の東邦”が狙う5度目のV
まずは、白星発進。今大会から東邦は、紺だったアンダーシャツの色を白に変えている。初優勝の1934年と同じ色に戻したのだ(ちなみに、キャップも丸型に変えた。藤嶋が帽子を飛ばすことがなかったのは、そのせいもあるらしい)。
「純白……調べたところ、67年に紺にしているので、4回の優勝のうち3回が白です。そういう先輩の思いを汲み、白星ともかけて白にしました」(森田監督)
めっぽうセンバツに強く、“春の東邦”と呼ばれてきた名門。前回の優勝は、89年のことだ。もし頂点に立てば、優勝数4で並んでいる愛知県内のライバル・中京大中京高を抜くことになる。
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