語学で広がる日本人アスリートの可能性 川島永嗣が語る言葉と自己発信の大切さ
新天地スコットランドで始まった挑戦
新加入したダンディー・ユナイテッドで守護神としてチームを支える川島永嗣(左) 【写真:アフロ】
「最初の数試合はDFの名前が分からないような状態で出ていました。スコットランドに来て、スタイルもチームも分からない中での始まりでしたが、2月に入ったくらいから、だいぶ味方やチーム自体の特徴もつかむことができたので、自分自身もだいぶやりやすくなってきたと思います」
(スコットランドは)ベルギーとも本当に違うし、とにかく前に前にっていうスタイル。ショートだろうが、ロングだろうが、フィジカルだろうが、力任せだろうが、ボックスの中で勝負をかける、みたいな部分がある。そういうシュートが飛んでくるリーグにいられるのは、自分にとって本当にいい機会だと思います」
新しい土地での挑戦を川島はこう振り返る。チームにすぐに順応し、結果を出すことができるのは、その語学力によるところも大きいだろう。英語、イタリア語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語、オランダ語の6カ国語を操る守護神は、大宮アルディージャに在籍していた18歳のころから語学に興味を持ち、独学で複数の言語の勉強を始めていた。2010年、川島は川崎フロンターレからベルギーのリールセに移籍。そこはさまざまな国の選手が集まる多国籍集団だった。
「18歳の時は、ただ興味があってやっていただけだけれど、自分が海外に出た時、こんなに生きるとは思わなかったです。ベルギーは英語、オランダ語、フランス語が混じっている多言語の国で、多国籍のチームでちょっとでも喋れることが、こんなに自分の生活や仕事を楽にするとは思わなかったですね。
(共通語は)英語だけど、スペイン語しか分からない選手がいたし、そういう意味では喋れたことで、チームメートとのコミュニケーションはだいぶ楽でしたね。分け隔てなくつき合えました」
言葉を話せた方が自分が生きるし、可能性が広がる
サッカーに限らず、日本人アスリートにとって「語学の壁」は1つのハードルとして存在する。しかし、川島はアスリートだから語学習得のための努力が免除されるといった例外はないと言う。
「本当に成功したいんだったら、その国の人たちの言っていることとか文化とか、チームメートが何を考えているのかを理解するという意味では、言葉を話せた方が自分が生きるし、可能性が広がると思います。サッカーだけに集中すると言っても、チームメートとコミュニケーションを取らなきゃいけないわけですよね。試合中も、その一瞬がゲームの全てを変えるわけですし。
その国に行ったら、その国の言葉を喋るのが当たり前というのが、どの国にいても普通だと思います。自分たちは仕事で行っているわけだから、それを最低限やるのは当たり前ですよね。何よりそれが理由で嫌な思いをしたり、自分の全然関係ないところでストレスを感じるわけじゃないですか、サッカー以外のところで。それだったら、話せるように努力した方が、日本人選手の可能性が広がると思います」
日本の良さをもっと発信していくべき
「(語学が)喋れたからといって損したことはないですよ。サポーターから文句を言われているのが分かるとか、そういうのはありますけれど(笑)。でも、痛みも分からなかったからどうなのかと。ただ臭いものにふたをして、実際に海外で経験するべきことをしないで、『僕はそれで良かったです』と言って終わるのか、そういうことも海外の経験だと思ってしっかり受け止めて進んでいくのか、そこには大きな差があると思います」
代表チームにおいても、もっと主張をしてもいいと川島は考えている。
「今の日本サッカーの立ち位置は、自分たちが考えていることをきちんと海外に発信できないといけない立場だと思うんです。それなのに、日本の選手は英語が喋れないからという理由で何の主張もしないというのは、自分たちの立場を無視しているし、発信していかなければ日本のサッカーを認めてもらえないと思います」
川島は語学力の重要性、そして自らの考えを発信していくことの大切さを、自らの体験を通じて訴えていきたいという。
「今後のアスリートが語学の弊害なしに、もっと海外で活躍してもらいたいと思います。アスリートだけではなく、日本人が自分たちが持っている良さをただ内に秘めているだけではなくて、もっと世界に発信していけるような形を持ってもいいと思います」