語学で広がる日本人アスリートの可能性 川島永嗣が語る言葉と自己発信の大切さ
中野遼太郎(FKイェルガバ/ラトビア)
ラトビアでプレーする中野遼太郎。今ではチームとの契約交渉も自分で行っている(写真はポーランドのアルカ・グディニャ時のもの) 【提供:Global Athlete Project】
「サッカーに関しては難しいことも話し合えるようになってきたと思います。ロシア語に関しては、難し過ぎて心が折れそうというのが正直な気持ちです(笑)」
チーム内では英語が共通語。勉強の成果や語学力の恩恵を日々感じているという。
「僕の場合は、住んでいる国が英語圏ではなく、外国人選手も多いので、皆がそれぞれ我流の英語で会話をしています。アフリカ系の選手もいればロシア系、中東系、ラテン系の選手もいて、それぞれがそれぞれのイントネーションや文法で意思疎通を図っています。勉強したことはロッカールームですぐに使えますし、そこで築いた人間関係は必ずピッチに反映すると感じています。
語学ができることは全てにおいてプラスだと思います。僕の場合は、今回の移籍も語学力がなければ成立しなかったと思っていますし、仮に成立していてもチームに溶け込めなければ試合には出られません。監督の考えが分からない、自分の主張を伝えられない、それはそのまま仕事がなくなることに直結しますし、通訳をつけられない以上、それは全て自分の責任です。また、仕事以外の部分でも、語順の違う文法で思考をしたり、自分とは全く違う生い立ちの人と過ごすことで、考え方に幅ができると思います」
内田昂輔(ブダイヤクラブ/バーレーン)
内田昂輔(右)はバーレーン初の日本人選手となった(写真はランサーン・ユナイテッドFC時のもの) 【提供:Global Athlete Project】
「初めて行ったブラジルで、チームメートや現地の方とコミュニケーションが取りたかったこと、毎日少しずつ言葉が伝わるうれしさを感じられたことで、もっと勉強したいと思いました」
英語とポルトガル語について、本人は「うまくはないです」と言うが、「チームメートと意思疎通を図ったり、一緒に食事やお茶に行ったりして楽しんでいます。文法など間違いながらも、積極的にコミュニケーションをするように意識しています」と語る。
「さまざまな国の人と関われること、文化の異なる彼らから話を聞けるのが面白いので、(語学ができて)良かったと感じます。サッカー選手としてもチームメートやチーム関係者、エージェントなどとの会話で必要と感じます」
石原孝尚(浦和レッズ・レディースコーチ)
14年から2シーズン、米国女子プロリーグ、スカイ・ブルーFCでコーチを務めていた石原孝尚 【提供:Global Athlete Project】
帰国した今も毎日、1時間のSkype英会話を続けており、海外の英語サイトを見て情報を集めている。米国時代のチームメートとは連絡を取り合っていて、その際には英語で話しているという。また、ドイツ語と中国語も始めようと思っているそうだ。
今では日常会話はできるが、「深い話になるとまだ十分ではない」と石原は感じている。語学習得の際には、指導者ならではの苦労もあったという。
「僕の場合は指導者なので、サッカーのことを常に考えています。しかし、英語を思考言語にはできていません。サッカーのことを考えれば考えるほど日本語を使ってしまい、英語の習得が遅れたと思っています」
「近い将来、また海外で指導をしようと思っています」と語る石原は、「言葉の壁」を乗り越えようと日々、語学習得に勤しんでいる。
「世界中で指導をしていきたいので、語学は最低限必要だと思っています。僕たち日本人は世界的にも優秀だと思うので、この言葉の壁さえなければ、世界どこでも活躍できると思っています。日本とか世界とかと考えているのは、言葉の壁を感じているからだと思いますので、そこは早く乗り越えたいです」
取材協力・インタビュー(川島永嗣):元川悦子