新10番・大儀見に芽生えた責任と覚悟 成長の先の覚醒を待つなでしこのエース
澤引退後のチーム作り
五輪最終予選の直前合宿でトレーニングを行うなでしこジャパンの選手たち(写真は22日のもの) 【写真は共同】
佐々木則夫監督は25日、記者会見の席で20名の最終予選メンバーを発表した。今回のなでしこジャパンにとっての大きなテーマの一つは、澤穂希引退後のチーム作りとサッカーの内容だろう。昨年12月に現役を退くことを発表した日本女子サッカー界のレジェンドであり、12年1月には男女を通じて日本人(アジア人)として初めてバロンドール(FIFA最優秀選手賞)を受賞した彼女はこれまで、なでしこジャパンに計り知れない影響と近年の好結果をもたらしてきた。
当然ながら澤の引退後初の公式戦となるアジア最終予選に臨むなでしこジャパンにも、少なくない影響が出ることが予想される。MF宮間あや(岡山湯郷Belle)とFW大儀見優季(フランクフルト/ドイツ)の2人が、澤とは違う形での存在感とリーダーシップを放つ大会になるのではないか。澤の引退発表直後、大儀見はこんな感想と覚悟を口にしている。
「澤さんが現役引退を発表し、私自身は身が引き締まる思いでいます。なでしこの中で経験があり、それなりの年齢にいる選手は、覚悟と責任感をこれまで以上に感じていると思います。そして、澤さんの現役引退は本当に寂しいことではあるけれど、これをきっかけとして、今いる選手全員の意識がいい意味で変わっていくことに期待したいと思います」
大儀見は23日からなでしこジャパンの直前合宿に合流している。帰国直前に話を聞いた際には、「澤さんが引退したことによって、私の中での自覚、責任感が芽生えたのは確かで、それは時間の経過とともに強くなっています」という頼もしい言葉も聞けた。
澤がつけていた「10」を継承
リオ五輪最終予選に臨むなでしこジャパン。大儀見優季(17)は澤穂稀(10)から背番号10を引き継いだ 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
しかし、今の大儀見は違う。「少なくとも20年の東京五輪と日本が招致している23年の女子W杯までは、最低でも現役選手として日本の女子サッカーを引っ張っていく立場にならなくてはいけないと感じています」と語り、リーダーとしての自覚、“澤がいなくなったあと”のなでしこジャパンを背負っていく覚悟をはっきりと表現するまでになった。
25日のアジア最終予選メンバー発表時には、澤がつけていた「10」を大儀見が継承することも明かされたが、ここ最近の発言を聞いていたことで、驚きというよりも納得感の方が強い。
昨年の女子W杯後にフランクフルトへの移籍を決断した大儀見は、今季はこれまでのところ、ベンチスタートが続く苦しいシーズンとなっている。しかし、本人は「非常に難しい状況にある」と認めながらも、「それを乗り越えてこそ、また新たな成長と自分に出会える。そう信じて疑いません」と前向きにコツコツとやるべきトレーニングと努力を積み重ねてきた。
例えば、クラブでコンスタントな出場機会を得ることが難しいと分かっていた大儀見は、リーグ再開前の1月のトルコキャンプでチームがまだ寝静まる早朝から、1人でランニングを行い、トレーニングや練習試合後も黙々とシュートやシャトルランなどの自主練に取り組んできた。「(フランクフルトでは)先発出場している選手よりも動けますし、フィジカル的には全く問題ありません」と、最終予選の10日間で5試合を戦い抜くためのコンディションをきちんと整えている。