「夢だった」スペインでようやく輝いた乾 活躍を待ち望む家族の前で決めた初ゴール

初ゴールを決めリーグ戦3連勝の立役者に

第19節エスパニョール戦で初ゴールをマークした乾、リーガ1部での得点は日本人史上4人目となる 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

「夢だった」というスペインの地で、ついに“歓喜の瞬間”は訪れた。

 現地時間1月10日、エイバル所属のMF乾貴士は、リーガ・エスパニョーラ第19節のエスパニョール戦で先発出場を果たすと、前半15分に今季初ゴールをマーク。本人いわく「打った瞬間に、あ、入ったなという感じ」だったという右足のシュートは、綺麗な弧を描きゴール右上隅に突き刺さった。さらに後半には、決勝点の呼び水となるPKを獲得し、2−1での勝利に貢献。リーグ戦3連勝の立役者となった。

 リーガ1部で日本人史上4人目の得点者となった乾にとって、昨年8月のエイバル加入以来、公式戦出場はこれが14試合目のこと。その額は30万ユーロ(約3800万円)とはいえ、“クラブ史上最高額”という形容詞が常について回る男にとっては、ようやく面目躍如といえる活躍を見せた。

 すでに日本で紹介されているように、試合後に現地メディアが掲載したこの試合に関する記事の見出しは、すべてが乾絡み。それも、いずれも“べた褒め”と言うべきほどの高い評価を与えている。中でもスペインのスポーツ紙『アス』は、「第19節に決まったベストゴール5選」の1つに乾のゴールを選出。その寸評では、次のような賛辞を送った。

「“BBC”(カリム・ベンゼマ、ギャレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドで構成されるレアル・マドリーの3トップ)と“MSN”(リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールで構成されるバルセロナの3トップ)が再び輝きを放ったが、真珠のような光を放ったのは、エイバルの日本人選手、タカシ・イヌイによる芸術作品だった」

人権費ワースト4位・エイバルの想定外の躍進

 この乾の活躍によって、エイバルは今季のリーグ前半戦をUEFAヨーロッパリーグ出場圏内である6位で終えた。ここまで稼いだ勝ち点「30」は、昨シーズンの1年間で稼いだ勝ち点「35」に早くも迫る記録である。今季が1部で通算2シーズン目となるエイバルにとって、これは快挙と言っていい。

『マルカ』紙によれば、チームの人件費は今季昇格組のスポルティング・ヒホンとラス・パルマス、そしてデポルティーボに次ぐリーグワースト4位。彼らよりも5倍以上の人件費を計上するバレンシアやセビージャを差し置いてシーズンを折り返すことなど、開幕前にはどんなエキスパートも予想できなかったことである。

 そんなエイバルの前半戦について、『ムンド・デポルティーボ』紙は最高評価の「優」をつけ、「長らく2部が定位置だったクラブが、1部の前半戦で勝ち点30、そして6位という歴史的快挙を成し遂げている。これほどの想定外が生まれるのが、まさにフットボールなのだ」と記事をつづっている。

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著者プロフィール

1984年生まれ、徳島県生まれ。マニュアル制作会社に勤めた後、2011年夏からフットメディアに所属。J SPORTSのプレミアリーグ中継や『Daily Soccer News Foot!』などに関わり、ライター・翻訳をメインに活動する。学生時代にはバルセロナへ1年間留学。ルームメイトがアルゼンチン人だったこともあり、南米コミュニティーのなかでフットボールのイロハを学べたことが今の財産。

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